それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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period⑤

サイト開設記念に間に合った!
でもちょっと短めです。すみません。

今後もどうぞよろしくお願いします(*^^*)











「落ち着きました?」



「・・・あ、はい・・・」


待ち合わせ場所に着いたあたしを、細田さんは驚いた様子で迎えた。
破れたスットッキングからのぞく膝からは血が出ているし、顔はぐちゃぐちゃだし、それは当然だったと思う。
細田さんはすぐにタクシーを呼ぶと、自分が滞在しているホテルへと連れて行ってくれた。


「・・・あの、・・・すみませんでした」
あたしは自分の足下に視線を落とす。細田さんに手当てをしてもらった膝が目に入る。


「おすすめのワインがあるのですが、良かったら飲みませんか?」


「・・・何も、聞かないんですね・・・」
まだ涙声の自分が情けなくなる。


「・・・聞いてほしいですか?」


「・・・・・・」


「あなたを取り乱させるのは、一人しかいないですよ」
そう言うと、細田さんは見たこともないほど真面目な表情をしていて、すぐに困ったように笑った。



「・・・ほ、細田さ」






「・・あ・・・、す、すみませんっ」

あたしは突然震えだした携帯電話を慌てて取り出す。
しかし、動作はそこで止まってしまった。
映し出された文字に、心臓が飛び跳ねる。

なかなか出ようとしないあたしを不審に思った細田さんが近づいてきた。

「香さん?」

「・・・あ、あの・・・」
どうしよう。
いつまでも鳴りやまない着信音が、あいつの「出ろ」というメッセージに聞こえてしまう。
でも、何を言えばいいの?


「・・・冴羽さん、でしょ?」
苦笑いをしながら、細田さんはあたしの手から携帯電話をそっと奪った。


「? 細田さん・・・?」




ピッ





驚いたあたしは声を出しそうになったが、細田さんは唇に人差し指をあてて目で合図をする。





「もしもし?」


『・・・・・・誰だ?』


「以前お世話になった細田です。ご無沙汰しています」


『・・・なぜお前が出る』


「あ、香さん、今シャワーなんですよ。急ぎの用事ですか?」



『・・・・・・』




ブチっ





「・・・切られちゃった」
細田さんは、まるでいたずらを見つかった子どものように笑った。

「なんで・・・」

「香さんにあんな顔をさせたんですよ?ちょっといじわるしたくなったんです」
怒ったかな、彼。と、また笑った。
あたしはゆるゆると首を振る。

「リョウはあたしの為になんか怒りませんよ」
あたしもまた笑った。








**********








クーパーを走らせながら、横目で助手席を見る。
そこには二つに折られた無惨な姿の携帯電話。



『香さん、今シャワーなんですよ』

さっきの男の声が木霊する。



『知らねーぞ、後悔しても』

続けてよみがえったミックの言葉。



後悔ならとっくにしてる。


あのときの香の告白がどれほどの覚悟を意味していたのかが今、痛いほどに分かる。
きっとあの男に想いを告げられ、あいつなりに迷って考えた結果があの夜の行動なんだろう。
俺に振られたら、あの男のもとへ行くつもりで。

最初はそれもいいと思った。
堅気の男と一緒になって、結婚して、子どもを産んで、ごく普通の幸せな家庭を築いて行く。それこそが、俺が香に望んでいたことだった。
―――それなのに。

あいつが着飾って出かける姿に。
微笑んで電話する姿に。
肩を並べて歩いている姿に。
俺の限界はすぐに訪れた。自分の気持ちにしていた蓋は、あっけなく壊れた。


『仕事上のパートナー』などという言葉は、俺の予想以上に都合のいい逃げ道だった。

仕事上のパートナーならば、一緒にいる理由になる。
仕事上のパートナーならば、手を出してはいけない。
仕事上のパートナーならば。

自分に都合のいいように言い訳をくり返してきた結果がこれだ。


(・・・余裕ねぇ・・・)

じりじりと胸が締め付けられる。
今、こうやっている間に、香があの男に触れられているんじゃないかと思うと、腹の奥からどろどろした感情が沸き上がる。


「チッ!」

ハンドルを思い切り叩く。



『今更よ、リョウ』



確かに、今更だ。
俺にさんざん傷つけられたあいつにとっちゃ、当然の意見。

自分自身にこんなに腹が立ったのは初めてだ。












携帯電話はスマートフォンではありません(笑)
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