それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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period④

お待たせしました。










「おい、電話」

「え?」
夕食の支度をしている香に電話が鳴った。


「もしもし?」
少し遠慮がちに電話に出る香の後ろ姿を雑誌片手に見る。
相手は細田だった。
ほぼ毎日電話してんじゃねぇか・・・。マメな男だ。

最近、香は夜に外出するようになった。たぶん相手の仕事の都合だろうが。昼間に出かけていたときには感じなかった焦燥感が俺を包む。今夜は帰ってくるのだろうか?そんな思いが日に日に俺を浸食して行った。実際、香が朝帰りをしたことはない。ほんの数時間で戻ってくるが、その間にあの男と何をしていたのかなんて想像するだけで腹の底のドロドロしたものが渦巻く。
一番気に入らねぇのは俺の知らない香りがするところだ。帰ってきた香とすれ違う瞬間、わずかだが、男物の香水がする。その香りのする手でこの女のどこに触れた?そう勘ぐってしまう。
香に、この場にいない男の所有物の印を付けられたようでこの上なく気に入らねぇ。


「リョウ、あたし出かけるから。ご飯はできてるから1人で食べて。ごめん」

エプロンをはずしながら香は言う。
俺は雑誌から目を離さずに
「デートぉ?ずいぶんお盛んで」
とからかいの口調で言った。香はそれには乗らず、淡々と言う。
「食器はシンクにつけておいて」
それがおもしろくなくて俺は続けた。
「この前までは俺に迫ってたくせに。切り替えが早い早い。香ちゃんやるね~」
その言葉に香はゆっくりと振り返った。そして正面から俺を見る。

「・・・それって親心?」
いつか香に言った言葉を思い出して言葉に詰まる。

「あたしは自分の想いを真剣に伝えたわ。そしてその想いもまた本気だった。でもあたしの恋は実らなかった。その『答え』を出したのがリョウ、あなたよ。だからあたしも『答え』を出した。ただそれだけのことよ。・・・・・・行ってくる」
そう言うと香は背を向けてリビングを出ていった。

雑誌を床にたたきつける。
分かってる。自分がどれだけ勝手なことを言ってるか。
どれだけ香を傷つけたのか。
分かってるが――。



「チッ」




着替えを終えた香を待ち伏せしたように廊下に立つ。
俺に気がついた香はだまって通りすぎようとした。
「『答え』、出したんだろ?」
香が目の前を通り過ぎようとする瞬間声をかけた。足を止めた香は怪訝そうに俺を見る。

「じゃあなぜまだそばにいる?」
「・・・言っている意味がわからないわ」
「まだ俺のことが好きなんだろ?」
「!」
違う、こんなことを言いたいんじゃない。俺の思いとは裏腹に口は勝手に言葉をはき出す。

「答えを出したと言って、俺のそばから離れないでいる。それが本当の『答え』なんじゃないのか?」
「仕事のためよ」
「嘘だ」
「本当よ」
「嘘だ」
「何が言いたいの?」

嘘だと言ってくれ。俺が好きだと、だからそばにいるのだと。
そう思ったのと香を抱きしめたのはほぼ同時だった。
「!・・・ちょっ、はなしっ」
いきなりのことに驚いた香はすぐさま抵抗してきた。胸を押し返そうとする細い両手を片手で封じ込み、噛み付くように唇を奪った。



「!!・・・っ」


香から小さい声が漏れる。俺は香の頭の後ろに手を差し込むと上を向かせ、更に唇を深く奪った。
香は俺の胸をたたくが、そのすき間もないくらいきつく抱き寄せる。わずかに開いた口から舌を侵入させる。

俺が今までおまえに手を出さなかったのは何のためだと思ってる。
他の男に渡すためじゃねぇ。



「・・んんっ!・・・」
息苦しさから漏れた香の声に力を緩める。すると、その隙をついた香が俺の唇を噛んだ。


「!・・っ・・」


ばしっ


「はぁっ、はぁっ・・・」
乱れた息を整えようとする香の目には涙が溢れていた。
俺は噛まれた唇の血をぬぐいながら静かに香を見る。




「なっ・・・んで、こんなこと!」











「好きだ」






香の目が大きく見開く。



どんなにごまかしても、見ないふりしても、気持ちに蓋しても、俺はおまえが好きなんだ。
ずっと前から。

ごまかすのは、もうやめだ。






「好きだ」



俺はもう一度くり返した。





**********





―――好き?


リョウがあたしを?


―――いつから?


混乱する頭であたしはかろうじて言葉を返した。
「ふ、ふざけないでよ!」
「ふざけてなんかない」
「ふざけてるわよ!何言ってるか分かってるの!?」
「ああ。俺はおまえが好きだっつったんだよ」



あたしの告白は何だったの?
今までの想いは?
男女とか、妹とか、親心とか、そうやってあたしを遠ざけていたのは?


手がふるえる。
すると、無機質な機械音が鳴った。


それをきっかけに足を踏み出した。
リョウは行かせまいと腕をつかんでくる。

「離して」
「いやだ」
「・・・離して!」
強い力で正面を向かされ、自然、リョウと目が合う。リョウは何も言わない。
「・・・・・・っ・・・、離して。お願いだからっ」
耐えられなくなってあたしは顔を伏せた。
「いやだっつってんだろ」
「なっ」
「ほれてる女が他の男の所に行くっつうのに、行かせるわけねーだろ」

まただ。胸のあたりが変にざわざわする。


あたしを好きとか、なんで今頃言うの?

あたしに特別な人ができそうになったから?



「・・・らよ」

「あ?」

「今更よ、リョウ」


「あたし、もう決めたの。細田さんを愛するって。だからリョウの気持ちには答えられない。あなたにあたしを止める権利はない。遅れるから離して」



リョウの手をすり抜け、あたしはその場を後にした。








息を乱しながらあたしは走っていた。
人混みをかき分けて、ただ、ひたすらに。




―――リョウがあたしを好き?


―――リョウと・・・キスした・・・


―――でもなんで今? だったらなんでこの前応えてくれなかったの?





・・・・・・わからない。

・・・・・・わからない。


どのくらい走ったのだろう。
足がもつれて転んでしまった。
涙がポタポタとこぼれてくる。なんで泣いているのか、自分でもわからなかった。









うちのカオリンは手強い。





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