それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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period③

ちょっと短めです。すみません・・・!








「・・うそ・・・」



行き交う人々の中、あたしは立ちつくした。
久しぶりの依頼。
ようやくツケが払える、という思いより先に来た「どうしよう」という思い。
リョウとあんなことがあって以来、なるべく避けたいと思っていた事態だった。リョウのそばに居続ける限り、あたしがそれを望む限り、依頼を避けるなんてことは不可能だ。そもそも依頼が来なければ、と思うこと自体が間違っていることは分かる。分かるけど・・・。
漏れそうになったため息を飲み込み、すばやく手帳に書き留めた。




「リョウ」



夕食のときに切り出した。




「依頼が来たんだけど」

箸を止めたリョウは先を促すようにあたしを見た。

「ストーカー被害にあってるらしいの。詳しくは明日会ってからなんだけど」
「もっこりちゃん?」
「・・・電話の声はね」
「ふーん・・・」


ごっそさんと言ってリョウは席を立った。
え?それだけ?


「う、受けていいのよね?依頼」
「あぁ」
追いかけるように慌てて言うと、リョウは驚くほどあっさり返事をして出て行った。






あの夜からお互い必要最低限の会話しかしなくなった。というか、あたしがそうだからかもしれないけど。いつも通りを装っているけど、ぎこちないあたしに気づかないリョウじゃない。わかっててあたしに合わせている。
一緒に暮らすようになって顔を合わせるのがこんなにつらいなんて、初めてのことだ。
朝は今までより早く家を出て、夜は早めに自室に籠もる。なるべく2人きりにならないように。
そうまでしてそばにいたいの?と自分に問いかけるのはもう日常のこと。でも仕方ない。振られても、女として見てもらえなくても、いつも通りに振る舞えなくても、そばにいたいと願ってしまっている。好きなのだ。どうしようもないくらいに。



だからこそ。



依頼で失敗など許されない。

私情で依頼人を危険に晒し、リョウの足を引っ張るなんてことはあってはならない。

今のあたしにそれができるのかと自分でも不安に思う。それをリョウが思っていることも知っている。





本当は、いつパートナーを解消されてもおかしくないのかもしれない。





* * *




あたしの不安に反して、依頼はあっけないほど無事に完了した。
でも、次はこうだと限らない。
もしかしたら、「次」なんてあたしにはないのかもしれない。


クーパーのボンネットに腰をおろして2人の後ろ姿を見る。
依頼人はあいつの好きそうな美人だった。白いワンピースのよく似合う、黒髪の艶やかな女性だ。守ってあげたくなるような、ずっとそばに置いておきたくなるような人。男の人の気持ちは分からないけど、大抵の人はそう思うんじゃないかな。



依頼人がリョウを好きになるのはいつものことだ。
分かっていてもやっぱり胸は痛い。でも前ほどの激しさはないかもしれない。



視線の先には向かい合う2人の姿。
一人に縛られるのを嫌うリョウのことだから、この先も特別な女性はつくらないだろう。毎回のように依頼人に想いを寄せられても、すり抜けるようにうまく断るんだろう。


――あたしはこの場面をあと何度見ればいいのかな。


あたしに特別な人ができたらこんな思いはしなくなるんだろうか。
想いを告げられるリョウを見ても、何も感じなくなるんだろうか。

ふいに鳴った機械音にメールが来たことを知る。


『お疲れ様です。あとで電話します。    
                   細田』


連絡を取ることが当たり前になりつつある。こうやっていくうちに細田さんを好きになるのかな。
返事をしようとボタンを押すと、リョウが戻ってきた。

「帰るぞ」
「あ、・・・うん」






窓を流れる景色をぼんやりと眺める。さっきのことを問いつめる資格はあたしにない。
仕事中に依頼人にちょっかいを出すことに関してはいつも通りハンマーで制裁を下すが、日常のナンパに関してはあまり干渉しなくなった。もともとプライベートに口出す権利はないって言われてたし、あたしが細田さんと会うことにリョウも何も言わなかった。
仕事上のパートナーであるあたしたちにとって、これが本来の姿なんだと思う。今までが近すぎただけ。っていうかあたしが一方的に、だけど。


無機質な機械音が鳴る。

慌てて見ると、細田さんからだった。あ、あとで電話するって言ってたっけ。あたし返事するの忘れてた・・・。リョウの前で出ることが戸惑われ、しばらく躊躇する。すると、いつまでたっても出ないあたしを不審に思ったリョウが言った。


「出ねぇの?」

「・・・ぁ、いま、でる・・」


――ピッ


「・・もしもし」
『もしもし、香さん?今大丈夫ですか?』
「ええ、はい。ごめんなさい、メール・・」
『あぁ、いいんですよ。仕事、どうだったかなって気になって』
「終わって今帰りで・・」
『ケガしなかった?』
「大丈夫です。ええ、はい」
『よかった。また連絡します。今日はゆっくり休んで』
「ありがとうございます。はい、じゃあまた」


――ピッ


小さく息を漏らす。
優しい人だと思う。友達という関係になって1ヶ月と少し。それ以上のことを細田さんが望んだことは一度もない。心地よい距離感だと感じている自分に驚いた。一緒にいて楽しいと思うし、安心できる。その安心が最近、信頼に変わりつつある。この先信頼が何かに変わるとしたら、それは何となく分かる気がする。もしかしたらそれはそう遠くないのかもしれない。

(いつも連絡をもらってばかりいるから、たまにはあたしから電話してみようかな)

そんなことを考えながら携帯電話をバッグにしまおうとした。その時。



「今の、誰?」
「ぇ、誰って・・」
「あの男?」
「・・・そうだけど」

リョウの言う「あの男」が細田さんを指していると分かって、敢えて名前を出さずに答える。


「付き合ってんの?」
「・・・」

なんて答えたらいいものか。・・・っていうか、

「・・・なんでそんなこと聞くの?」
今まで気にも留めなかったくせに。

「だって香ちゃんの初の彼氏だろぉ?槇ちゃんへの報告しなきゃな~と思って。槇ちゃん泣くんじゃないかぁ?俺の妹によくもー!ってなぁ~」




・・・またアニキ?




「まぁ、俺にとってもようやく妹に春が来たって感じだなぁ。親心みたいなもん?」








・・・妹。
・・・・・・親心。











分かった。今回で本当によく分かった。














もういい。












「大丈夫よ、アニキにはあたしから報告しておくから。妹の晴れ姿を楽しみにしててって。あ、もちろんリョウも楽しみにしててよ。あたしみたいな男女を嫁にもらおうなんて言ってくれる奇特な人、もういないからさ!」




ニッと笑って隣を見る。

大丈夫。きっとうまく笑えている。













原作を読み返したらリョウちんに沸々と怒りがっ・・・!
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2012/08/19 (Sun) 05:36 | EDIT | REPLY |   
tokososuke">

tokososuke  

そうですよね。

うちのリョウちんは酷いんです(苦笑)もうガンガン後悔しているはずです。
原作を読み返したとき、リョウちんのあまりの態度に本当に怒りがわいてきて(笑)もちろんリョウちんの気持ちも分かるんですが、そりゃないでしょー?という展開の多いこと多いこと。じゃーリョウちんにも同じような思いをしてもらおうと考えまして(笑)
あまり長くお待たせしないように頑張ります!
ルミさま、この度はコメントをありがとうございました!(^▽^)

2012/08/22 (Wed) 19:43 | EDIT | tokososukeさん">REPLY |   

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