それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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period①

ご無沙汰しています。
相変わらずの見切り発車ですが・・・(汗)
ちょっと続きます。













それは、あたしのせいいっぱいだった。

一生分の勇気を使い果たした、そんな気分だった。
もう二度と今までの関係に戻れないかもしれない、
その迷いさえ吹き飛ばしてしまいそうなあたしの決意。

最初で最後の言葉は、あっけなく宙に舞い、そして音もなく砕けた。
あたしのせいいっぱいだった。

・・・せいいっぱいだったの。



period




あの日から1ヶ月。
なるべくいつも通りを装ってきた。
「血迷った」
そう言い聞かせて、自分の気持ちに蓋をした。
6年もの月日を「血迷った」の一言で片付けられるほど軽いものだとは思わない。
けれど、あいつの態度があたしをそういう思いにさせる。

あたしから、最初で最後の言葉。
きっとあいつは聞きなれている言葉だったと思う。
硬い決意で発したけれど、かすかに震えていたと後から思った。
この期に及んで、アニキを出してきたことや、男女だと言ったことよりも、そう言わせている自分が情けなくなった。
結局、あたしは一人の女として見られていなかった、
一人で盛り上がって、気持ちを押し付けて自己満足しようとしていた哀れな女なのだと、
そう言われているような気がしていたたまれなかった。


洗濯の途中で空を見上げる。


あたしの気持ちと同じように、重い雲が広がっていた。






**********




「好きなの・・・」



突然の言葉に、思わず目の前の女を凝視した。
その顔は、いつも見るあどけなさの残る、色気のない顔ではなかった。

一人の女の顔をしていた。


言葉を呑む。


こんな顔をする女だったかと自問自答をしていると、ふわりと香の腕が俺の首に巻きついた。
かすかに香る女の匂いとシャンプーの香り。
(・・・まずい・・・)
頭の奥で警鐘が鳴る。
「おいおい、寝ぼけてんのかぁ?」
香の腕を解こうと身を引きながらやっとのことで言葉を絞り出すと、シャンプーの香りがより濃く感じられた。

香が、俺に、唇を寄せていた。

初めて感じる唇の柔らかさに、さっきの警鐘がうるさく響く。
(まずい、これ以上はまずい・・・)
そう頭で分かっていながらも、唇を離すことができない。
香の、たどたどしさにもキスを続けようとする姿に愛しさが込み上げる。
触れ合うだけの感触に物足りなさを感じて、思わず左手で香の後頭部を引き寄せ、侵入を深くする。
角度を変え、何度も何度も口付けをした。


「んっ・・・」


急に深くなった口付けに息苦しさを感じたのか、香が声を漏らす。

その声で我に返った。

いつの間にかソファに香を押し倒していた俺。
シャツの襟元が少し乱れ、息が荒い香。

「は、はぁ~~い、ここまで~」

俺は体を起こし、香から離れておどけてみせた。
香は、何を言われているのか分からないという顔をしている。


「いくら男日照りだからって俺に迫るなよなぁ~。俺がお前にもっこりしないの分かってるだろぉ?お前は、俺の、仕事上の、パートナー。親友の妹。そうだろ?お前に手ぇ出したなんて槇ちゃんに知られたら俺殺されるっつーの。ま、そもそも男女のお前じゃ俺をその気にさせるのは無理な話だけどな~。しっかし香ちゃんずいぶん大胆になったんじゃない~?」

一気に言った。

いつもなら、ここでお馴染みのハンマーがくるはずだった。しかし身構えてもいつもの反応がない。
返事のないことをおかしく思った俺は、振り向いて香を見た。

香はソファに座って、下を見ていた。
ここから表情は見えない。

「香・・・?」

「そっか」

俺の言葉とほぼ同時だった。




「そうよね。それがアンタの気持ちよね」

そう言うと香は立ち上がり、俺を見た。

その顔を見て、言葉を呑む。


悲しげで、そして儚げで。泣きそうで、でも笑っていて。
ともすれば崩れてしまうような、そんな表情だった。

「気分悪くさせて、ごめんね」
そう言うと、香は背を向ける。

「お、おいっ、かおっ」
「リョウは」
香が俺の言葉を遮る。



リョウは?


次の言葉を待つがなかなか出てこない。
なんなんだ?
いつもとはまったく違う香の行動と反応にとまどいを隠せない。
胸の鼓動の速さはさっきまでの行為のせいだけではない。あのまま続けてしまいそうになる自分を抑えた強固な理性に拍手はする。だが―――。

さっきとは別の警鐘が俺の中で鳴り響く。

何かがひっかかる。



「・・・香?」

「やっぱりリョウだよね」

言っている意味がわからない。

「・・・どういう意味だ?」
いつもと違う香への不安、顔が見えないことへの焦燥感。
らしくもなくいら立っているのがわかる。自然と声に力が入る。

俺の問いかけには答えず、香は「おやすみ」と言い、リビングを出て行ってしまった。

本当なら、ここで追いかけて問い詰めるべきだ。
でも、長年積み上げてきた「関係」がそうさせない。

俺は何か重大なミスを犯してしまったのではないか。そこまで考えて、ふとめずらしく動揺している自分に気が付き、苦笑を洩らす。
「重大なミス」なんて今さらだ。香をパートナーにしたこと。それが俺の人生で犯した最も重い罪だろう。
明日になれば、またいつもの二人に戻れる。
いや、戻るしかない、俺たちは。
そうやって均衡を保ってきたし、これからもそうだ。
そう自分に言い聞かせて、俺は部屋に戻った。



**********


「細田さん。」
「あぁ、槇村さん。」

細田さんは片手を挙げてにこやかに微笑んでいる。

「すみませんっ、お待たせしてしまって・・・。」

荒く息をつくあたしを、細田さんは「僕も今来たところです」と、笑顔のまま言ってくれる。
「今日、なんだか雰囲気違いますね。」
「えっ、そうですか!?」
どこかおかしかったかしら?あたしは、慌てて自分の身なりを見回す。
「いやいや、いつもより増して素敵だなぁって意味ですよ。」
そう言うと、「ホント、槇村さんって可愛いなぁ」と小声で付け加えた。

あ、そういう意味だったんですね。

「あ、あははっ、そうですか!」
恥ずかしさのあまり、声が上ずる。


今、あたしの目の前にいるのは、細田恭二さん。外資系会社に勤務。32歳。
・・・元依頼人。

1ヶ月前、告白された。


*  *  *


「好きなんです。」



・・・は?
突然、元依頼人に呼び出されたあたしは、目の前の状況が把握できなかった。

「えっ・・と・・・、細田さん?」
顔に出ていたんだろう、細田さんは苦笑しながら、
「あぁ、そうですよね。突然すぎますよね。」
なんて言いながら、頭を掻き、そして続けた。

「以前、僕を守ってくれたときからずっと気になっていたんです。
あれから僕がすぐ海外に行ってしまったので諦めようとしたんですが、今回また日本に戻って来ることが決まったとき、槇村さんに会いたいって思ったんです。」

「槇村さん」
顔を上げると、真剣な目をした細田さんと目が合う。
「僕と付き合ってくれませんか。」
「えっ・・・」
このとき、あたしはすごく困惑していたと思う。男の人に、こんなふうに真摯に思いを告げられたことは初めてだったし、どう反応すればいいのか恋愛経験に乏しいあたしには正直苦手な展開だった。
「あ、あの・・・」
どうしよう。どうしよう。
今きっと目、泳いでいるよね、あたし。
何て言えばいいのかしら。あたしにはリョウがいるからって?ううん、あたしとリョウはそんな関係じゃないし・・・でもあたしはリョウが好き・・・よね。あいつはあたしのことどう思っているのかしら?いつも男女とか言うし、やっぱり仕事のパートナーでしかないんだろうな、あたしがこんなふうに告白されても、何とも思わないわよね、きっと・・・。
ほおっておけば、どんどん沈んでしまう思考の中で、見かねた細田さんがあたしに声をかけてくれた。
「あの・・・、槇村さん?」
「あ、は、はい!すみません・・・。」
何が「すみません」なのか自分でも分からないが、思わず言ってしまう。
細田さんは、苦笑しながら、「困らせてしまったかな」と小さく言った。
「そ、そんなことないです。でも、お気持ちはうれしいんですが、あたしは・・・。」

あたしは?

それに続く言葉が出てこない。

「冴羽さん、でしょ?」
はっとして顔を上げると、穏やかな目をした細田さんと目が合う。
「依頼をお願いしたときから、槇村さんの冴羽さんに対する気持ちは知っていました。そして冴羽さんもきっとあなたのことを大切に思っている・・・、そんなお二人を見て僕は適わないと思ったんです。でも諦め切れなかった。だから思いを告げました。」
そう言うと、にっこりと微笑んだ。
「玉砕覚悟ですが、お返事を頂きたいです。もちろんすぐにとは言いません。僕はまだ日本にいますし、急ぎませんので。そうだな・・・、一週間後、またこの場所でお会いできますか?」


それから、あたしはキャッツにも寄らずに、まっすぐ帰った。
ハンドバックを引きずり、ソファに腰を降ろす。
どうしよう。
一週間後・・・あと7日。
疲労がどっと押し寄せて来る。

別に考えることはないわよね、だってあたしはリョウが好きなんだし。
――でも、ずっとこのままの関係でいるつもり?
このままの関係って?
――仕事上のパートナーってことよ。リョウと恋人になりたくないの?
こ、恋人って・・・。だってあいつにとってあたしは唯一もっこりしない女なのよ?恋人なんて夢のまた夢よ。なりたくったってなれっこないわ。
――だったらあたしの気持ちはどうなるの?
あたしの気持ち・・・。
――このままずっと閉じ込めておくの?思われもしない男のために?
・・・・・・あたしがいいんだから、いいのよ。
――あきれた。そばにいられるだけで満足とか言うつもり?他の女性を口説くあいつを見るだけで嫉妬するあんたがよ?あいつとの恋人関係を望んでいるのはあんたのほうじゃない。
・・・あたしが?リョウと・・・恋人になりたいって、思ってる・・・?
――諦めたふりして、一番望んでいるのはあんたよ。でも自分からは踏み出せない。ううん、踏み出さないのよね。今の関係が壊れるのが怖いから。でも思いは止められない。なんてわがままで、強情で、欲張りなのかしら。・・・こんな「あたし」を、あいつはどう思うかしらね?
やめてっ、やめて!聞きたくない!

「・・・い、おい。香?」


瞬間、目の前が白く光った。
いつの間にかリョウが帰ってきたみたいだ。
両手をかたく握ったまま、じっと動かないあたしを不審がって、声をかけたのだろう。

「リョウ・・・」
やっと出した声は、かすれていた。
「どうした?何かあったのか?」
いつもはふざけた口調であたしをからかうけれど、でも、この男は優しい。
あたしの異変にすぐ気がつき、嘘はすぐに見破る。
だから、あたしは勘違いしてしまうんだ。
リョウがあたしを見てくれていると。

「ううん、何でもない。ごめん、ご飯まだなの。すぐ作るから、先にお風呂に入ってきたら?」


気持ちはひとつのはずなのに。

あたしは、すぐに答えを出せずにいた。









時間差、分かりづらくてすみません。








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