それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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いつくしみと愛情の狭間

香ちゃんの一人語りみたいな。
少し暗めかも。














そこにあたしの意思はあるの?



いつくしみと情の狭間





依頼人だった人が亡くなった。
97歳になるおばあちゃんだった。

笑ったときにできる目尻のしわが印象的だった。
いつも淡いグリーンのスカーフを巻いて、ひざに子猫を抱いていた。
ちょっと休憩にしましょうってすすめてくれるクッキーは少し湿気っていて、紅茶はぬるめのときが多かった。
しわしわの手で子猫をなでながら「香ちゃん」って呼んでくれた。

祖母を知らないあたしにとって、つかの間の「おばあちゃん」。
あの空間が好きだった。



亡くなったのは、もう1週間も前のこと。
あたしがそれを聞いたのは昨日だった。






呆然とするあたしにリョウが声をかける。

「・・・大丈夫か?」

「・・・ん」

小さく返事をすると、あたしはリビングを出た。
向かう先は屋上。


生ぬるい風が頬をなでる。
光り出したネオンが、あたしの心と対照的に輝く。

(・・・まただ・・・)



おばあちゃんが亡くなったことは悲しい。
もう会えない。
その痛みをあたしは知っている。

でも、それよりもあたしの心を支配しているもの。
人が亡くなったときにこんな感情を抱くなんて、我ながら薄情だと思う。


(慣れてるじゃない、何を今さら・・・)


後ろに見知った気配を感じる。
あたしの隣一人あけてリョウは手すりにもたれかかった。


「・・・眠るようだったってさ」

「・・・そう」


違う。あたしが聞きたいことはそれじゃない。






「・・・リョウは知ってたんだよね?残された時間が少ないってこと」

「・・・・・・ああ」
「だったらっ」
「言うとそうなるだろ」
「・・・」
「元依頼人でも、おまえは心配して落ち込む。だから言わなかった」


いつもそれ。
大事なことはいつも後から知らされる。
そこにあたしの意思はないじゃない。
事実を知ったときのあたしの気持ちが分かる?

「・・・悪かったよ」

そう言っても、またあなたは同じことを繰り返す。
今までも、これからもきっとそう。


「・・・もしさ」
視線を夜景に向けながら、あたしは口を開いた。


「もし、あたしが病気になって、余命わずかだって分かっても、リョウは絶対告知しないよね。たとえあたしが告知を望んでも」

顔をリョウに向ける。
珍しく驚いた表情をしている。そんな顔もできるのね、なんて。

「心配させたくないとか、悲しませたくないとか。そこにあたしの意思はないじゃない。ただの自己満足よ」


言うだけ言うと、あたしはその場を後にした。




ごめん、ちょっと八つ当たりした。
心配かけたくないって思われる自分の不甲斐なさにも腹が立っているの。
パートナーなんだから、何でも言ってほしいの。
気を遣われると、いつか手放されるんじゃないかって不安なの。

でも優しいあなたのことだから、きっとこの先も続くわね。

その度にあたしがどんな思いになるかも知らずに。














自分だけが知らなかったっていう状況、結構精神的にきます。
秘密主義のリョウのことだから、こういうことってかなりありそう。


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