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in captivity《完》

captivity(11)

-2 COMMENT
過去最速更新爆走中。















「来たか・・・」



「・・裏切り者」

海原の部屋に入ると、あたしはすぐに口を開いた。



「裏切り者か・・、それはずいぶんな言い方だな」
罵られたにもかかわらず、海原は目尻に皺を寄せてあたしを見た。





「身請けの話、聞いたんだろう?」
視線を窓の外に移しながら、海原は静かに言った。




「・・・断ったわ」


「リョウが嫌いか?」



「嫌いよ、大嫌い」
間髪入れずにあたしは言う。



「ふっ、大嫌いか・・・」











「すいぶん、嘘が下手になったな」

「・・・」




「おまえが感情を表に出すなんて、何年ぶりだろうな・・」
問いかけるように言った海原はしかし、窓の外を見たままだ。






「・・話はそれだけ?」


「・・・ああ」

あたしは部屋を出ようと戸に手をかける。





















「香」



















戸にかけた手がびくっと跳ねた。

もうずいぶん遠い昔に呼ばれていたあたしの名前。
懐かしい響きが胸に届く。






「もうじき4年だ」

海原が何を言いたいのか、嫌ってほどわかる。でも、あたしはそれに聞く耳を持つつもりはない。
くるりと振り向くと、海原と目が合った。





「まだ、4年よ」

それだけ言うと、あたしは足早に部屋を出た。


******************************************




「だからっ・・・親父さんに止められてましてっ・・・!」

男はあたふたと説明をする。その顔があたしをますます苛立たせた。

「それは何度も聞いたわ」

「だ、だったらっ」

「でも、その話をあたしが守る義理なんてないわよね?」

「コ、コウさん~・・・」

勘弁してくれ、と男は項垂れる。
この男には悪いが、あたしが客を取ろうが何だろうが、海原に指示される筋合いはない。これまで「客を取るな」なんて一度も言ったことがないのに、何で今になって。
・・・発信源は何となく察しがつく。


「・・・じゃあ、あの『冴羽』って男の指名は受けないから。それなら、あんたの言う条件をのむわ」

自分の出した条件に、自分で呆れてしまう。それじゃ、商売女もあったもんじゃない。

「・・・いや、それは・・・」

「リョウ」という男は、この店にとっていい客のはずだ。海原との付き合いもあるみたいだし、機嫌を損ねると店の為にならない。それは目の前の男も分かってるみたいで。

「それができないんなら、あたしは客を取る」

きっぱり言うと、あたしは男に背を向けた。後ろで何か言っていたみたいだけれど、それには構わずいつもの部屋へ行く。
きっと海原に言いに行ったのかもしれない。
けれど、あたしにはどうでもいいことだった。



早く客を取って、あの男の痕を消したい。
それだけだった。




***



「コウです」
両手をついて、深々と頭を下げる。顔を上げると、上機嫌の客と目が合い、あたしはにっこりと笑う。



結局、あたしは海原の指示に従わず客を取り今に至る。特に海原に止められることもなかったため、やはり気まぐれだったのかと、どこか諦めにも似た感情が生まれた。
そして自分がそういう気持ちになっていることにまた戸惑った。
感情は殺してきたし、これからもまたそうするつもりでいたから。


客に酌をし、他愛もない話をする。
客の話に笑いながら相づちを打ち、ときどき大げさに喜んでみせる。





『腹ん中じゃ冷めてんだろ?』





突然よみがえった男の声に、酌をする手が揺れる。







『客を取れなくて困ってたんだろ?』

『いつもそうやって笑ったふりしてんのかって聞いてんの』

『俺はてっきり“香”だと思ったがな』


次々と浮かんでは消える男の声に心臓をわしづかみにされた感覚に陥る。





(・・・なんで・・・)





あたしは酒を脇に置くと、客を誘う。



早く、早く。
あたしの中からこの男を追い出して。



急かすように床へ誘うと、客も品のない表情をしながらあたしを押し倒す。
ざらりとした無骨な手があたしの上を這う。
着物がはだけ、肌が客の目の前に晒される。
客の息が荒くなったのがわかった。













あたしに触れる手の感触が



手が体を這う順番が



息づかいが



瞳が




























生暖かいものが頬を流れる。



































あたしは、泣いていた。
































驚いた客があたしの上から飛び退いた。




「うっ・・・、ふっ・・・ぅ」



ありえない、ありえない、ありえない。
信じられない。
認めたくない。








あたしを身請けしたいって言ったくせに、なんであれから来ないの?
やっぱりもう飽きたの?
あの言葉はあたしをからかっただけ?
あたしの過去を聞いて面倒な女だと思ったの?
なんであたしを抱いたの?

なんであたしを抱いたの、何度も、何度も。






ありえない。

信じられない。

「リョウ」のことが好きで好きで他の男に抱かれたくないと思ってる自分なんて、


認めたくない。















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- 2 Comments

There are no comments yet.

-  

tokososuke様
初めまして、幸と言います。いつもいつも楽しみに、拝見させて頂き、更新再開を大変喜んでおります。
この度の「captivity」、とっても切ない思いで読ませて頂きました。
時代も設定も原作とは違えど、2人のキャラクターは原作に近く感じ(特にあの意地っ張りな不器用さ!)、ドキドキしながら拝見しました。
日々の生活の中での創作活動は、なかに大変かとは思いますが、身体に気をつけながら続けて頂ければと思います。また次回作を楽しみにしております。

2012/01/16 (Mon) 22:49 | EDIT | REPLY |   
tokososuke">

tokososuke  

ありがとうございます!

tokososuke">

幸さん、はじめまして!(*^^*)
この度は遊びに来て下さってありがとうございます!
とても温かいお言葉に、パソコンの前でにやけてしまいました・・・(笑)すごくうれしいです。
ずっと滞っていましたので、楽しみにして下さっていた方々には本当に申し訳なく思っています。何とか終わりが見えてきましたので、次で完結できるかと思います。
初めてのパラレルで、しかもカオリンの設定が遊女って!と自分でも思ったのですが、原作ではカオリンの方がヤキモキしているので、たまには冴羽氏に頑張ってもらおうかなというもくろみで始めました(笑)
まだまだ初心者で至らない点が多々ありますが、またぜひ遊びに来て下さるとうれしいです☆
お待ちしております(^^)

2012/01/17 (Tue) 22:10 | EDIT | tokososukeさん">REPLY |   

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