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in captivity《完》

captivity(9)

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※香が槇兄らしき人(?)とちょっと関係を持ちます。苦手な方はご注意ください。すみません。










いつもより執拗な抱き方に、女は早くも意識を手放した。
あちこちに残る痕に、思わず苦笑が漏れる。
中には赤とは呼べないほど濃く残ったものもある。

(・・・よっぽど余裕をなくしていたのか)

らしくもないほど、焦れて、夢中になっていたらしい。

・・・俺にもこんな感情があったのか・・・。



隣で可愛い寝息を立てる女の髪にそっと触れる。
ずっと見ていたいようで、しかしそれはひどくくすぐったいようで。
不思議な感覚が俺を包む。


俺は着物を羽織ると、その場を後にした。








「・・・で。話というのは何だ、リョウ」


















「・・・コウを、香を、身請けしたいと思っている」



















俺がそう言うと、海原はわずかに目を見開いた。
しかし、すぐに目を細めて笑う。



「・・・惚れたのか?」





「・・・・・・」



何となく素直に返事をする気になれなくて、視線をはずす。



「・・・そうか。お前がなぁ・・・。まぁ、客を脅してコウを奪うくらいだから、相当、か?」
海原はしかし、どこか楽しそうだ。















「・・・・・・だめか?」


なかなかもらえない返事に、俺は少し不安になって尋ねる。


「・・・いや。女好きのお前が言い出すほどだ。よほどの覚悟と想いがあるんだろう?ただ・・・」

「ただ・・・?」

「コウには過去がある。忘れられない過去がな。そんな女がお前の話に素直に頷くとは思えん」

「過去・・・」

ぼそっとつぶやく俺に、海原は聞くか?と尋ねて来た。


******************************************




夢を見た。






あたしがまだあの家にいたころの夢。

あたしは生まれて間もなく両親に捨てられた。
またまた通りかかった夫婦に拾われ、あたしは育てられた。

頼もしい父に、優しい母。
幸せだった。

あたしには年の離れた兄がいた。
いつも微笑みながらそっとなでてくれる兄に、あたしはいつしか特別な感情を抱いていた。
そしてその想いは絶対に隠し通さなければならないものだということも悟っていた。

血はつながっていなくても、本当の娘や妹のように接してくれる家族が大好きだった。


あたしが17の頃。

父の仕事がうまく行かなくなった。
人の良い父は、他人の借金を背負わされ、家には毎日のように取り立てが来ていた。
その借金取りがあたしに目をつけた。

『この娘を売りゃ、金は用意できんだろう?』

そう言って両親を脅した。
でも父も母も、決してあたしを売ろうとはしなかった。
他人のあたしを、実の娘以上に思ってくれている両親に胸が痛くなった。


だから。


あたしは自分から売られることを選んだ。
両親や兄に言えば反対されることは分かっていたから、誰にも言わなかった。
あたしにできる唯一の恩返しだと思ったから。



その夜。
あたしは兄を呼び出し、抱いてほしいと言った。
売られたら、どんな目に遭うのかは分かっていた。だから、せめて初めては好きな人と、思ったのだ。

あたしの本心を知らない兄は、そんなことできないと言い放った。
それもそうだろう。
兄からすればあたしは妹だし、10近くも年の離れた小娘など対象外に等しかったに違いない。
それでもあたしは必死になって食い下がった。

すると兄は苦しそうな表情を浮かべ、あたしに唇を寄せて来た。
突然のことに驚いたあたしに兄は言った。

『お前がもう少し大人になったら、親父に言おうと思ってた。夫婦になりたいって・・・』

夢かと思った。
本当に?あたしはそう口に出していた。目からは涙が溢れる。

『ああ、本当だ・・・』

そう言った兄の顔は一生忘れない。
その夜は何度もあたしの名前を呼んでくれた。
温かい腕に抱かれながら、この夜のことをずっと、ずっと覚えていようと、そう心に決めた。












「・・・にい、さ・・」




自分の声で目が覚めた。
ぼんやりと眺める視界が、しだいにはっきりしてくる。



・・・そうだった。ここは。


今のは夢・・・。


久しぶりに夢を見た。
あの声も、温かさも、もうずいぶんと前のことなのに、まるでさっきまで抱かれていたみたいだ。








・・・そう言えば、あの男がいない。



あのときの男は初めて見るものだった。
眉間には皺が寄せられていて、どこか苦しげに怒っていた表情とは別に、体に触れる手は信じられないほど優しかった。
あたしの体が反応していないことがわかると意地の悪い笑みを浮かべたから。


(馬鹿にされたと思ったのに・・・)


まるで焦らすように、あたしの反応を楽しむように、ことさらゆっくりと行為を始めた。
かすむ視界の中で、だんだんと男の動きが激しくなって行く。一度だけではなく、何度も何度も確実に高みへ連れて行く行為に、あたしの方が先に意識を手放したのだ。

体が素直に反応してしまったことにもだけど、それよりも。
男が現れたことへの驚き中にあった、わずかな『安心』。
その正体が何なのかを深く掘り下げて行けば、きっと答えは出る。そうわかっていてもあたしは知らないふりをする。
自分はどうかしていたんだと、言い聞かせて。

******************************************




「―――そしてコウは自分から身売りに行った。それから間もなく、家族が気づいたんだろうな。コウを取り戻しに来たんだよ。兄貴が一人でな。すごい血相だったと聞く。」

「・・・それで?」

「・・・殺されたよ。たった一人相手に容赦ないやり方だったらしい。それに気がついたコウは真っ青になって駆け寄った。泣きながら何度も兄を呼んだが、もう虫の息だった。あれは恐らく、恋仲だったろうよ。もともとコウは身寄りがなかったから血のつながりはない」

「・・・親はどうしたんだ?」

「親も殺されたよ。また来たんじゃ面倒だと口実を作ってな。それを知ったときのコウの取り乱しようと言ったらない」

「・・・おいおい、それじゃあいつが身を売った意味がねぇじゃねぇか」

「ああ・・・。恐らく、そいつらはただ単にコウが欲しかったんだろうよ。あれだけ器量がよけりゃ、目もつけられる」

「・・・殺したやつらはどうしてんだ?」

「私が片付けた」

「・・・そうか」

「まぁ、ともかく、コウにはそう言った大事な人を失った過去がある。・・・驚いたか?」

「・・・いんや。あいつの態度を見てると、何となくだが人を寄せ付けないところがあるからな。おおかた、自分のせいで、とか思ってんだろうよ」

「ふっ、頼もしいな」


「・・・邪魔したな」


海原の部屋を出ると、俺は女のいる部屋へ足を進めた。












もし槇兄が生きてて恋敵とかになったら、リョウちん勝ち目ないかなぁ。


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