それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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声をきかせて(10)











真っ暗で何も見えない。
ここがどこなのかさえ分からない。
息苦しい。どれくらいここにいるんだろう。
誰かいないの?誰か――。そう叫ぼうとして声が出ないことに気付く。

真っ暗で、音もなくて、どこかさえも分からなくて。

あたし、どうしちゃったのかな。


「――カチ、―――カチ、――」


何の音?

声?

「――カチ、―――カチ、――」

カチ?

「――カチ、―――カチ、――」

この音――



瞬間、目の前が真っ白になる。



「!」




『彼女、ぼくちんの恋人で~す』

『だろぉ?超もっこりちゃん♪』

『今日は夕飯いらねぇから』

『そ。デートなの』

『べっつに。普通だろ?』

『なにおまぁ,ナンパにホイホイついてったのかよ』

『抱きしめてる』

『妹への・・・抱擁・・・みたいな?』

『ナンパ男、何だって?』

『いろいろ検査することになると思うって』

『声が出なくなったくらいで簡単に解消なんてするかよ』

『お前には関係ない』
















『お前には関係ない』

















―――あ!

走馬灯のようによみがえる記憶。
あたし―――。



『どれだけ想っても、どれだけ愛しても、もう、どうにもならない』

『これ以上想いを溢れさせては、だめ』



「あの音」。




「あの音」は、「あたし」を閉じ込めた音――。

リョウを好きな「あたし」を閉じ込めた音だ。



だから、あたしは「リョウを好きじゃない自分」になれた。
醜い嫉妬で苦しむこともなかった。家族の愛情で接することができた。
そして、本当の想いを伝えられないかわりの、「あたしの想い」を伝えた。


『リョウなりにあたしのこと、大事に思ってくれてたの、分かってたよ。だから、幸せになってほしい。あたしの大事な大事な「家族」だから』



『パートナー、解消しよう』



――そうだった。思い出した。


そしてあたしは声を失った。
伝えられた満足感からなのか、想いが溢れてしまったときの防衛策なのか分からないけれど。

どうして忘れていたのだろう。

・・・ああ、でも、もういいんだ。

あたしが言うことは何もない。
伝えたいこともない。
閉じ込めた「あたし」を元に戻すつもりもない。
リョウのそばにいられるのなら、自分を押し殺すくらいなんともない。

それがあたしの出した答えだ。
だから、もういいんだ。


でも、このままここにいるんなら、どっちでも同じかな。

何かもう疲れた。このままでいい。




倒れ込み、意識がまどろみかける。ひどく瞼が重い。



「――、―――、――」


「――り、――」


遠くで何か聞こえる。


「――り、――おり」

誰かの声。

「――か、――おり」

誰?



「香」



重い瞼を上げると、遠くの方に誰かが立っている。
ゆっくり体を起こし、目を凝らす。
あれは――。




リョウ―――



どうして・・・?



「香」


声とともにリョウの姿が近付いてくる。


どうしてリョウがここに?


「香、帰るぞ」

帰る?どこに?

「俺らのアパートに決まってるだろ」

どうして・・・

「どうしてって、」

だって、パートナー解消するって、

「そんなのお前が勝手に言い出したことだろ。俺は納得してない」

納得って、そういう問題じゃないよ

「そういう問題だよ」

一歩ずつリョウが近付いてくる。
「俺のためとか俺の人生とか、そんなの、どうでもいい」

だんだん距離が縮まる。

待って

「待たない」

待って

「待たない」

来ないで

「嫌だ」

待って、このままリョウが来たら、あたし。
溢れてしまう。せっかく閉じ込めた「あたし」が目を覚ましてしまう。



それは、だめ。



すぐさま後ろを振り向き、駆け出す。

「香っ!!」


思うように足が動かない。でも逃げなきゃ。リョウから離れなきゃ。

「くそっ!」

後ろから舌打ちが聞こえたが速度を緩めることはしない。
前も後ろも分からないまま、とにかく走った。息が切れる。


「香っ!!」


やめて。あたしを呼ばないで。
お願いだからこっちに来ないで。
せっかく閉じ込めたのにまた出てきちゃうじゃない。

遙か彼方にうっすらと光が見える。
あそこまで走れば・・!
息が切れて足がもつれる。
もう少し、もうすこっ、


っ!!




ものすごい力で引き寄せられた。
次の瞬間には、息が止まるほどの強い力があたしを襲う。

あたしの耳元に荒い息遣いと背中から鼓動が聞こえる。

「おまっ、・・ばかっ・・・」


!!



リョウに後ろから抱きしめられていることに気付いたあたしは激しく抵抗する。

やだっ・・!離して・・!!

「っ!香」

やめて呼ばないで。

なおも激しく抵抗するあたしをそれよりも強い力でリョウは抱きしめる。

なんで・・!

「香」

耳奥に響く優しい声に、ぽろりと涙が落ちる。
やだ。

「嫌だなんて言うな・・」

苦しそうに呟かれた言葉に、あたしは顔を手で覆う。
やだ、やだ、やだ。
せっかく「あたし」を閉じ込めたのに。
ようやく平気な自分になれたのに。
これじゃ同じことを繰り返してしまう。
リョウを好きな女性に嫉妬して、リョウがナンパするたびに怒って、あたしを「男女」扱いするリョウに傷ついて、日に日にリョウへの想いが募って。
このままじゃまた――。



「いいよ」




「繰り返したって、いいよ」


「俺には、お前のいない方が・・きつい」

・・・え・・、なに・・?


・・・何を言われているのかよく分からない。
あたしがいないと・・・?
リョウは何を言っているの?


「そのままの意味だよ」




「そのままの意味だ」


あたしの首元に顔を寄せながら、あたしに優しい言葉をかけるリョウは、知らない人みたいだ。
耳元でリョウがふ、と息をはく。

「知らない人、か・・」



「俺はずっと思ってたよ。槇村が死んで、お前と暮らすようになって、お前が俺の中で大きな存在になるまで時間はかからなかった。大事な預かりものなんてお前を裏の世界にどっぷり浸からせないための俺の言い訳だった。ずっとそばにいてほしい、お前に触れたいって、俺はずっと思ってた。」

な、に・・・

「本当だよ」

・・そ、んなの・・

「ああ。信じられないって言うんだろ?」


だって。
さんざん「男女」って言われてたし、唯一もっこりしない女だし。そもそも、リョウがそんなふうにあたしを思ってた素振りなんて、全然記憶にない。
現に、恋人だって作ってた。あたしが知らないだけで、きっともっとたくさんの女性がリョウの周りにいたはず。

「・・・正直、女遊びは否定しない」

「でも、それもずいぶん前にやめた」

・・・やめた?

「そう。やめた」

・・なんで?

「もうコイツ以外欲しくないっていうヤツができたから。っつーか、俺がようやくその気持ちを認めたから、かな」

・・・あの人のこと?

「あ?あの人?・・・・・・いや、違う違う」
はぁ、とリョウの長いため息が漏れる。

「おま、この状況でそれってマジで天然な」

ぎゅっとあたしの体が引き寄せられる。



「香。お前のことだよ」














「お前が好きだ」
















あっ・・・。



目の前に真っ白な光がさす。




あたしの奥の方にリョウの言葉が染み渡る。


ピ、――、ピシ――。


何かに亀裂が入る音が聞こえる。




『おまぁ、ちっとも料理の腕上がんねぇのな』

『もっこりちゃんの依頼しか受けんっ』

『だぁーー!俺のお宝ちゃんが!』

ピ、――、ピシ――。


『こんの怪力男女!』

『ま、俺のパートナーだしな』

『ここ擦れてんじゃねぇか』

『ほれ、手』

『ふ、ばぁーか!』

『重っ!リョウちん腕折れちゃう~』

『香』

『さすが俺のパートナー、かな』



ピシ――。







『お前が好きだ』






ずっとずっと夢見てきた言葉。

ずっと聞きたかった言葉。










でも。





―――遅いよ、リョウ。








次で終わる・・・はず・・・。

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- 3 Comments

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2016/05/31 (Tue) 23:38 | EDIT | REPLY |   

みぃな  

続き気になります

素敵なお話を読ませて頂けてとても幸せです(^^)
この後の2人がとても気になります(>_<)
続きが読める日を楽しみにしています(^^)

2016/08/20 (Sat) 10:23 | EDIT | REPLY |   

-  

とっても楽しみです

2016/12/10 (Sat) 23:04 | EDIT | REPLY |   

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