それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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声をきかせて(8)











「ねぇ、大丈夫かしら?」


「いーんだよ、ミキ。さんざん泣かせてきたバチがあたったのさ。なぁ?ファルコン」
「フン!」
「本当よね」

ばっさりと言い切る3人に苦笑気味の美樹。
「それはそうだけど・・・」
と、言葉を濁してしまうのは、やはり美樹の中にも同じ思いがあるからなのか。

「それに、オレたちがいくら心配したって状況は変わらないと思うしね」
「ミック・・・」
「違うよ、カズエ。カオリを心配していないわけじゃないさ。本人が動かないことには何も変わらないってことさ」
な?というふうに海坊主に視線を向ける。
「フン!ヤツもようやく動く気になるだろう」

ミックは数日前のリョウとのやりとりを思い出す。
突然飲みに誘われて、訳の分からない愚痴を聞かされて、結局惚気かよ、と単純に思っていたが、事態は予想以上に深刻だった。
もちろん、みんな香のことを心配している。海坊主にとっては愛弟子で、美樹にとってはかわいい妹で、かずえにとっては大切な友人だ。心を痛めないはずがない。
しかし、その原因が長年自分の気持ちに素直になれず悪あがきをしてきた友人となれば、自然に意識と怒りはそちらへ向くもので。力を貸したいと思うものの、やはり原因となった本人がどうにかするのが筋というもの。
というより、この場合、リョウにしかできないと暗黙の結論に達している。

「ミキ、カオリは何かを閉じ込めていると言っていたね」
「ええ」
「カオリが自分で自分を閉じ込めるもの・・・リョウが原因・・・、となると・・」

全員の視線が交差する。

「ヤツへの思い、だな」

海坊主が静かに口を開く。

「でもどうして?香さんが冴羽さんを好きなことはもうずっと前からでしょう?どうして今更・・・」
「そこだよ、カズエ。リョウが恋人を作ったことで、二人の間に今までにない何かがあった。というより、カオリがそう感じたのかもしれない」
「今までにない何か・・・」
かずえが反芻する。

「あ!」
「どうした、美樹」
「冴羽さんの恋人宣言の少しあと、香さんがうちに来たときのことなんだけど・・・」
「何かあったのかい?」
「香さん、変だったの」
「変って?」
「変っていうか、いつもと違う感じっていうか・・・。冴羽さん、恋人作ったでしょ?普通自分の好きな人に恋人ができたらショックを受けると思うの。特に香さんはうそがつけない性格じゃない?でも、そのとき落ち込んでいるようには見えなかったのよね。だから違和感があって・・」
「・・・・・」
「ミック?」
急にだまりこんだ夫にかずえは声をかける。

「ミキ。それはオレも感じていた」
「ミックも?」
「ああ。いつも通りすぎるのが逆に気になった。・・・っていうことは、もしかしたら、」

「そのとき既に香は自己暗示をかけていた」

海坊主がまた静かに口を開いた。

「と、考えるのがシゼンだね」
謎は解けた、とばかりにコーヒーを飲む。

「冴羽さんに、」
「いや、ヤツは気付いているだろう」
「オレもそう思う。あとはリョウが何とかするさ」

もっこりどころか、自分の思いすらまだ伝えていないんだ。
このままにしておくことも、手放すつもりもさらさらないはずだ。






***





「よう」

(リョウ)

既に日課と化しつつある教授宅への訪問。
声が出ない以上身の危険の回避は難しい。アパートに戻る判断は戸惑われた。

(毎日ごめん・・)

俺が来るたびに言うお決まりの台詞。

「久しぶりに外出るか?体は元気なんだし、お前もずっと中にいたんじゃなま、・・・」

俺を見上げる香の視線に言葉を止める。



何だ?



(リョウ・・)


ベッドの傍のイスに座り、距離を縮める。
香の言葉を待つ。

(そっちは、どう?)
「どうって?」
(ご飯とか・・・、洗濯とか・・)
「ああ、大丈夫だって。キャッツで食べてるし、今の時代、コインランドリーなんて便利なものもあるんだぜぇ?リョウちん余裕~」
(・・そっか)
ふ、と頬を緩めると、すぐにもとの表情に戻った。

(あのさ・・)
「うん」
(あたし、こんなじゃない?)
「声のこと?」
香が首を縦に振る。
「だから?」
(だから・・・)
嫌な予感がする。

(休みたいの、シティーハンター。しばらく、だけど・・)
「・・・・・声が戻るまで?」
今度はためらいがちに首が縦に揺れる。わずかな動揺は声を絞り出すことで隠す。

(勝手なのは分かってるんだけど、このままじゃパートナーって言えないし・・。もししばらくたっても声が戻らなかったら、・・・)

香の言おうとしていることが見えてきて脈が早まるのを抑えられない。

香はシーツをぎゅっとにぎり、俯く。

「俺は平気だぜ?」
香は頭を激しく横に振る。
俺は静かに息を吐き出すと、香の提案を受け入れた。
「休むのは分かった。本調子じゃないんだ、当然だろ」
香はまだ頭を横に振っている。


「香?」

ようやく顔を上げた香の目は、まっすぐ俺を射抜いた。



(・・・しょ・・う、しよう)





何?







(・・パートナー、解消しよう)













すぐに言葉が出てこない。





(ずっと考えてたの。このままじゃ今まで以上にリョウの足手まといになる。自分のことも守れないのに、依頼人を守れるわけないって)



何を、


「まだそうと決まったわけじゃ、」

香が首を振る。
(教授でも、美樹さんでも原因が分からなかったのよ?すぐ直る可能性は低いと思うの。・・・リョウもそう思ってるでしょ?)




何を言ってる?


あれほどシティーハンターのパートナーに拘って、俺に食い下がってきたのはお前だろう?

攫われるたびに陰で泣いて、それでも俺のパートナーであろうとしてきたのはお前だろう?

「解消」なんて、なんでお前が軽々しく言うんだ。



「却下」


え、と香が顔を上げる。
(なんで?)

「なんでって、俺のパートナーはお前だろ?声が出なくなったくらいで簡単に解消なんてするかよ」

香と視線を合わせる。この話は終わりだと言おうとした瞬間、香は眉を下げて少し困ったように微笑んだ。

(リョウ。あたし、言ったよね?リョウにはリョウの人生を送ってほしいって。こんな状態のあたしと一緒にいることが、リョウのためになるとは思えない)



だからなんでそんなに平然と言うんだ。イライラする。


「・・・だから、解消、か?」

(うん。それに、このままあたしが傍にいたんじゃ、彼女も気まずいじゃない?うまくいくものもいかなくなると思うの)

「彼女」なんて、いったい何のこと言ってるのか一瞬分からなかったくらい俺の中で既になかったことになっているのに。

なんでお前は。

「そんなことはどうでもいい」

香が激しく頭を振る。
(どうでもよくない!リョウがようやく見つけた女性でしょ?大切にしなきゃ)



――だから!


だからなんでお前が必死になるんだ?
俺の人生とか恋人とか、なんでそこにお前がいない前提で話が進むんだ?



イライラする。


気に入らない。


(ね、だから、)




「そんなの、お前に関係ない」




突き放すような言い方になってしまったのは、珍しく感情的になってしまったから。
俺が感じている言いようのない怒りを、香が少しも察していないから。


「とにかく、解消の話は、・・香っ!?」


香が突然頭を抱え出した。


「おいっ!香っ!?」






「香っ!」








今年1年ありがとうございました。
心よりお礼申し上げます m(_)m
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