それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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声をきかせて(6)









「教授、さっきの」
香をかずえちゃんに任せ、別室に移った教授に俺は口を開いた。

「さっきの“間”、お前はどう思う?」

教授の問いの後に見せた香の一瞬の間。

『そうか。じゃあ余計な心配事は減って夜はぐっすりじゃのぅ?』

戸惑いというより何かを。

「何かを思い出しているような感じがしました」
「うむ・・・」
教授はひげを撫でながら目を閉じる。

「最近、特に変わったことはないと言っておったな」
「はい」
「それは、お前に恋人ができたと香くんが知ってからもか?」
「・・はい」
「それは、“変わったこと”には入らんのか?」
「・・・」
「これまでの香くんだったら、お前が美女にちょっかいをかけようもんなら即ハンマーだったじゃろう。ましてや恋人ができたと知ったらどれほどの衝撃を受けるか。その香くんがお前の恋人が美人だと語り、うれしそうな表情をする」
教授の言いたいことが分かってくる。

「おかしいと思わんか?」
まっすぐ俺を射抜く視線に、静かにうなずく。

俺が感じていた違和感はこれだ。

これまで向いていた俺への関心が一気になくなった。
いや、正確にはある一部分にだけ。
ハンマーも小言も分かりやすい嫉妬もない。むしろ、快く「いってらっしゃい」と追い出す。
俺は今日まで感じていた違和感を説明した。相手によっては俺がうぬぼれている内容に聞こえるが、俺たちを知っている人間ならば誰もが納得するに違いない。いつもの香じゃない、と。

話を聞き終えると、教授は腕を組みながら俺を見る。
「香くんの様子が変わったのはいつからじゃ?つまりは、お前自身が香くんに恋愛感情を持たれていないのではないかと感じたころじゃが・・」

実際言葉で聞くと思っていたより衝撃が大きい。
わずかに走った動揺を気付かれないように記憶を手繰り寄せる。
あれは確か―。

「多分、10日ぐらい前だったと思います」
「その時に異変は?」
「ない・・と思います」
いつも通りに過ごしていたはずだ。俺がデートに出掛ける以外は。
「本当に?そのころはまだ香くんはお前のことを好きだったはずじゃぞ?」
眉が一瞬動く。いちいち過去形にしないでほしい。分かっててやっているんだろうが、このタヌキじじいは。





「あ」





『今夜はどこに行くの?もしかして、おしゃれなお店とか行っちゃってるわけ!?あ、でもあんたの財布じゃ無理よね。まさか、いつものお姐さん方がいるお店じゃないでしょうねー!』



思い出した。確かあれは夕食前のことだ。あの晩に限ってやたらとしつこく聞いてくるもんだから、俺もいら立ってらしくもなく香にあたってしまった。次の日、尾を引きずっているかと思ったら、予想外にいつも通りにしてくるもんだから、俺の方が驚いてしまった。記憶が正しければ、あの晩以降、だ。

「その時何と言ったんじゃ?」
「それがはっきり覚えてなくて・・」
「ほほう。いつも冷静なお前が珍しく感情的になったんじゃなぁ」
ニヤニヤしながら視線を寄こす。
絶対面白がってる。それどころじゃねぇだろうが。
「教授」
俺がため息をつくと、気を取り直したように真面目な顔になった。

「明日、美樹くんを連れて来なさい」

一瞬の緊張が走る。

「教授、」

「わしの勘が当たっていれば、の話だが。確かめんことには何とも言えん」

「・・分かりました」

教授の考えていることが言葉にしなくても分かる。
勘が当たっていればとは言うけれど、ある程度の確信がないことは口にしない人だ。確率はかなり高いのだろう。
もし教授の言うように、香に美樹ちゃんの力が必要な状態であれば。
きっかけは考えなくてもすぐに察しがつく。

俺のせいだ。

はぁ。

ガシガシと頭をかきながら香のいる部屋へ向かう。


「あ、冴羽さん」
「よ、調子はどうだ?」
パジャマに着替えた香は口を尖らせながら眉をよせる。

(全然平気だよ。元気だもん)

だよな。
ふ、と苦笑いを漏らす。

「念のため、おまぁは泊まりな」

(・・・うん)

「ま、明日また来るから」

(うん。・・・ごめん)

謝るな。お前が謝ることじゃない。

「じゃ、かずえちゃん、あと頼むね」

後ろ手を振りながら部屋を出る。
香の顔を見ていられなかった。あいつが俺に対し申し訳ないと、自分を責めるような表情をするのが耐えられなかった。



俺のせいだ。


お前の声が出なくなったことは、俺のせいなんだ。




***




(美樹さん、それに海坊主さんも・・・)

「お前の話したら顔見たいっつうからさ」

俺の後ろから入ってきた2人にわずかに香は驚きを見せた。
「香さん、大丈夫?」
眉をよせ、香の手を取る美樹ちゃんの姿は妹を心配する姉のようだ。
美樹ちゃんの問いに香は微笑み、(心配かけてごめんなさい)と口を動かした。
前もって教授に話を聞いていた美樹ちゃんを部屋に残し、香と2人にする。
俺と海坊主は教授のいる部屋へ場所を移した。


「わざわざ悪かったな」
「フン。お前のためじゃない。香のためだ」

そうだった。こいつも美樹ちゃん同様、香を可愛がっている一人だ。可愛い一番弟子の危機を知れば居ても立ってもいられなかったのだろう。
 
「リョウ」
珍しく真剣な声で呼ばれる。
「もし、香がこのままだったら、お前はどうするつもりだ?」
視力を失った目がサングラス越しに俺をまっすぐ射抜く。
こうもストレートに核心をつくのは、旧知の仲だからこそ。

だからこそ、刺さる。


「正直考えたくないね」


考えたくない。だからいつも頭をよぎる。

「もしあいつの声がこのままだったら、あいつはきっとシティーハンターをやめる」

足手まといになることを一番に嫌がる香のことだ。簡単に想像できるから表情が歪む。

海坊主の一言が俺の想像をクリアにしていく。

自分の声が戻らないと知った香は俺に解散の話を持ち出す。神妙な面持ちでリビングに来て。自分が人質になったときも、自分のせいで俺がけがをしたときも、あいつなりに落ち込んで悩んで迷って、でも、シティーハンターであることを選んできた。そんなあいつが解散の話をするときは、きっとすべての処理を終えたあとだ。アパートを出ていく準備、今後の身の置き場。そしてそれらを俺に知らせることはしない。
出ていくあいつの後ろ姿を見ながら、俺は何を思うのだろう。
「そんなこと気にするな」
「お前にいてほしい」
そう言って止めるだろうか。そう言えるだけの覚悟が俺にあるだろうか。

香が出て行ったあとのリビングを想像するだけで寒気がする。あいつのいる温かさを知ってしまった今、荒んでいたあのころに戻れる気がしない。


俺の沈黙をどうとったのか。

「まずは美樹くんに任せてみよう。話はそれからじゃ」

教授が口を開いた。









長らくお待たせをして申し訳ありませぬ(土下座)
コメントのお返事が1年以上遅れていて、とても心苦しいです・・・。
いつもいつも、本当にありがとうございます。
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- 6 Comments

T.E.LWRC  

いつも楽しみに拝見しています。続きが気になって気になって仕方がありませんw 更新、心待ちにしております〜。

2015/03/30 (Mon) 23:02 | EDIT | REPLY |   

むねお  

・・・また読み返してしまいました・・・これで何回目だろう??
続きが気になって仕方ない・・・
tokososukeさんの切なすぎるストーリー展開、大好物です♪
更新、心待ちにしてます!

2015/08/14 (Fri) 13:53 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2015/08/15 (Sat) 21:15 | EDIT | REPLY |   

tokososuke  

T.E.LWRC さま
こんばんは!この度はコメントをありがとうございました!そしてお返事が遅れて申し訳ありません!
更新をすっかりお待たせしてしまい、心苦しいです。もう少し続きますので、どうか気長にお待ち頂けるとうれしいです。これからもぜひ遊びにいらしてくださいね(^^)

2016/02/14 (Sun) 19:50 | EDIT | REPLY |   

tokososuke  

むねおさま
こんばんは。こちらにもうれしいメッセージをありがとうございました!
お返事が大変遅くなり申し訳ありません。
何度も読み返してくださって、とってもうれしいです!!
切ない二人がどう最後を迎えるのか、今後も見守って頂けるとうれしいです。
のろのろ更新に懲りず、またいらしてくださいね!

2016/02/14 (Sun) 20:16 | EDIT | REPLY |   

tokososuke  

あみさま
こんばんは。この度はコメントをありがとうございました!
お返事が大変遅くなり申し訳ありません!
お話を楽しんで頂けてよかったです。甘いお話はあまり得意ではありませんが、これからも切ないキュンキュンな二人をお届けできればと思います。また遊びにいらしてくださいね!

2016/02/14 (Sun) 20:20 | EDIT | REPLY |   

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