それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

声をきかせて(3)








最近、冴羽さんの姿をあまり見なくなった。
と言うより、

「見せなくなったのかしら?」

隣にいた夫に尋ねてみる。

彼は無言で皿を拭いたのち、
「フン!ヤツのことだ、
大方ここに来て何か言われることを避けてるんだろう!」

と、言った。

なるほど。
冴羽さんが来なくなって寂しいのは私だけじゃなかったのね。

そう言うと夫は、
今度は顔を真っ赤にし、

「だ、誰が寂しいと言った!
あんなヤツ、来なくてせいせいする!
店が破壊されなくて済むからな!」

などと、力説する。

ふふっ、そうね。
私は付け加える。

実際、店が壊されなくて、ここ数日平和な日が続いている。
それは同時に、「あの二人」が一緒でないことを意味する。

あの一件以来、冴羽さんは数えるほどしか店に来ていない。
来れば質問攻めにされることは知っていただろうし、
私達が冴羽さんの「恋人」を快く思っていないこともきっと知っていたからだ。


彼は何を考えているのかしら?

以前、私は夫に尋ねたことがあった。
夫は、「馬鹿が考えることは分からん。」と
口を閉ざしたが、すぐに、
「またいつものヤツだろう。」
と付け加えた。

「いつもの・・・?」
私には意味が分からない。

「あ~・・・アレだ。
自分は香にふさわしくない、とか思っているんだろう。
ヤツはヤツなりにない頭で考えている・・・
むっ、な、何だ?」

思わず笑ってしまったのね。
夫が怪訝そうに私の顔を見る。

「あなたが私にしたことと同じなのね。」

嬉しそうに私が言うと、

また顔を真っ赤にして
「フ、フン!」とそっぽを向いてしまった。

その様子を微笑みながら私は見つめ、
ふと、思った。

ふさわしいとかふさわしくないとか、
誰が決めることではない、と。
傍にいたいと思う気持ちに
ずっと一緒でありたいと願い気持ちに
そんなことが介入するものではない、と。


もし夫の言う通り、冴羽さんの思惑がそうだとしたら、
香さんは?

彼女はいつも通り店に来て、いつも通りに話をしていく。
その会話の中にはもちろん冴羽さんも出て来るが、
あまりに自然に言うので、なぜかこちらがドキリとしてしまう。
グチは相変わらず依頼がないことや、
冴羽さんが仕事をしないことだったりする。

その姿が普段と変わりないことが
私には違和感でならなかった。

そう。
私には、冴羽さんのとった行動よりも
その後の香さんの方が気になって仕方なかった。

冴羽さんの恋人宣言のときも
わずかな動揺を隠し、平然と言葉を紡いだことや、
その後も普段と変わりなく生活している姿は、
私の知っている香さんとは言い難かった。

強くなったとかそんな次元じゃない。
無理をすることが強いとは決して思わないし、
仮にそんなことをしていたら
私達にはすぐに分かる。
それを思わせない彼女の振る舞いに
私同様、夫も違和感を覚えていた。

一体、何があったのかしら。






***




「リョウ,今夜はご飯どうする?」
「あー・・・,いる」
「りょーかい」

俺に恋人ができてからというもの,おなじみになった香とのやりとり。
香と夕食をとらないということは,それはつまり恋人とのデートを意味するわけで。

最初は何となく気まずかったが,今や慣れたもんだよな。

自分から香と距離を取ることを選んだのに
いざ香の関心が自分に向かなくなるとおもしろくない。
自分勝手でわがままな言い分だと思う。

裏の世界にどっぷりつからせちまう前に
表の世界に帰そう
そう思ってしたことなのに。
あいつとの距離ができればできるほど
俺の中のどこかがざわざわと音を立てて騒ぎ出す。


「珍しいね」
「あ?」
「うちでご飯食べるなんて」
「あぁ」
「・・・ケンカでもした?」
「・・・してないっの」
「そのわりに悪くない?機嫌」
「べっつに。普通だろ?」
「そ?」

何でもないことのように
俺と彼女のことを話題に出す香が気に入らない。

・・・俺は香にヤキモチを妬いてほしいのか?

香と距離を取るはずだった俺の行動は
予想外に俺を苦しめていた。


「そういえばさー」

夕食後,洗い物をしながら香が言う。

「この前知らない人に声かけられてね。お茶しませんかって」
「・・・もっこり美女に?」
「そうそう・・・って,あたしは女だっ!」
コツンっとミニハンマーが飛んでくる。
「そうじゃなくて。男の人によ」
「・・・ナンパじゃん,それ」
「やっぱり?」
「何喜んでんだよ」
「だってさ!」
そう言って勢いよく振り返った香の表情は
以前俺に向けられていたものに似ていた。

「このあたしがだよ?
誰かさんに散々『男女』って言われ続けたあたしがナンパよ!?
これが喜ばずにいられますかっての!」

「へーへー。そりゃようござんしたね」
「むっ。気持ちがこもってない!」
「こめてねぇもん」
「もうっ!・・・ふふふ。でもいいもんねぇ」
「・・・何だよ。気持ちわりぃな」
「その人,けっこうイケメンだったの」
「・・・・・・で?」
「明日会うことになったんだよね」
香は少し照れたように,えへへと笑った。

いや,えへへじゃねぇし。
「なにおまぁ,ナンパにホイホイついてったのかよ」
「別にホイホイじゃないけど,まぁいいかなぁって思って」
オイオイ。何危ねぇことしてんだよ。
「何かあったらどうすんだよ」
「何かって・・・,大丈夫よ。いい人だし」
「そういう問題じゃねぇだろーが」

香がナンパについていくなんて。
これまでだったら考えられないことだ。
異性に声をかけられるだけで頬を染めていたのに
よく知りもしないやつとデートだと?
だいたいナンパするようなやつにろくなのはいない。
『やめろ。行くな』
喉まで出かかった言葉を飲み込む。それを言う資格が俺にはない。

「心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫よ,リョウ。
だからリョウもあたしに遠慮しないでいいからね」
そう言って香は優しく微笑む。

「アニキに頼まれたからってリョウの人生を犠牲にしてほしくないの。
リョウにはリョウの人生を送ってほしいから。
だからあたしのことはもう心配しないで大丈夫よ」

ね?と微笑む香。
目の前の女は本当に俺の知っている香なのか?

知らない男とのデートを嬉しそうに語り
俺に俺の人生を送れという
目の前の香は,俺の知っている香なのか・・・?

これまでに感じたことのない焦燥感。
足下から崩れていく感覚。


すぐそばで洗い物をする後ろ姿が離れて行きそうで
気づけば手を伸ばしていた。










勝手すぎる男、リョウ。
スポンサーサイト

- 2 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2014/12/03 (Wed) 22:56 | EDIT | REPLY |   

tokososuke  

シュカぴょんさま
こんばんは。この度はコメントをありがとうございました!
お返事が大変遅くなり申し訳ありませんでした!
ドストライクなんて、最上級の褒め言葉、とっても嬉しかったです。
これからもじりじりする二人を書きたいと思いますので遊びにいらしてくださいね!

2016/02/14 (Sun) 20:09 | EDIT | REPLY |   

Add your comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。