それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ガマンクラベ《2》




マンクラベ《2》





最後の電話から3日たった。
あれから電話が鳴らなかったところを見ると、宣言通りもっこりちゃんを連れ込んで目的を達成したのかもしれない。
仮にも一応仕事でパートナーを組んでいて、そのパートナーが行方くらませたってのに、電話がたった数回ってどういうことよ!!

「ほら、香。顔、か・お」

「! あ、ごめっ」

「まぁだ怒ってるの?あんたもホント、意地っ張りよねぇ~」
「だって!」
「はいはい。ほら、また」
「~~!」

薄く光がさす部屋の窓辺。カーテンのレースをそっと掴む。
「・・・あたしのことなんか、どうでもいいんだよね」
つぶやいたつもりが、目聡く地獄耳の彼女には聞えていたようだ。
「ん~?そうかしら?」
鼻の奥がツンとなるのをうつむくことでごまかすと、髪がさらりと落ちた。
「・・・だって。どうでもよくなかったら、来るでしょ。連絡」
「そんなに素直な性格じゃないんじゃない?冴羽さんって~」
ひやりとする窓に触れる。3月になっても、まだこの辺りは寒いらしい。
「あんたが一番分かってるんじゃないの~?」
「・・・だって」
「傷つくのも分かるけどさ~」
「・・・」
「あんたもちょっと大人げないし~」
「んもう!絵梨子ったら、どっちの味方なのよ!?」

あたしがそう言うと、絵梨子はようやく手を止めて顔を上げた。
「ん?もちろん、センスのいい方のよ♪」

一気に力の抜けたあたしは、ベッドに腰掛ける。

「あ、そのアングル、いいわね~」

なんて言いながら、絵梨子はシャッターを押していく。
頼る相手、間違ったかもしれない。・・・今更遅いけど。
あたしは何日でもここにいていいんだからね~なんて、冗談やめて。あと何日もこんな見世物みたいなこと、あたしの方が勘弁してほしいわ。
でも、帰れない。っていうか、そっちから謝るのが筋でしょ!?


「あ、ちょっと待ってて」


突然鳴った携帯電話を持って絵梨子は部屋を出て行った。







本当は帰りたい。でも、帰れない。
自分でもくだらない意地だと思う。いつも通りにハンマーで済ませていれば、もしくは「またか」と流せていれば、こんなことにはならなかった・・・はず。


ふとベッドサイドに置いた自分の携帯電話を見る。何回確かめても、着信ゼロ、メールもゼロ。自分から連絡してみる?いやいや、負けるなあたし!
もはや何の対決をしているのか、そもそも何が原因だったのかさえ忘れそうになってしまう。自分から飛び出したくせに恋しくなるなんてどうかしてる。




すると、携帯電話が震えだした。
「っ!」
突然のことに慌てて持ち直す。画面は「リョウ」の文字。

「!!」

あわあわと、どうしようかこの状況で迷っている自分に呆れてしまう。待っていたくせに。
すぐに出るのも癪なので、5回目のコールで出た。



「・・・しもし」

『香?』

「・・・なに」

我ながら可愛くない。あれほど待っていたリョウからの連絡なのに。

『今どこ』
「・・・ながの」
『長野ぉ!?何してんの、おまえ』
「・・・べつにいいでしょ」
『・・いつ帰ってくんの』
「・・もっこり美女が帰るころ」
『そんなの、最初からいねぇし』
「・・・」
『依頼、たまってんだけど』
「・・・」
『おまえ帰ってこないと、美樹ちゃんにツケ、しっぱなしなんだけど』
「・・・あした」
『あ?』
「・・・あした、かえる」
『・・・・・』
「?」
急に返事がなくなったリョウを窺うけれど、反応はない。

「リョウ?」
















「オイ」




「!!」
後ろから聞えた声に心臓が止まりそうになる。振り向くと、携帯電話を耳にあてたままのリョウが。

「なっ!なんっで、」

「今だ、今。い、ま、帰んの!」

「こ、ここっ、ながのっ・・!」

「だ~か、ら、・・・・・」

余裕綽々で表れたリョウの表情が固まっていく。なに、なに。今度はなに?




「おまぁ、なに、そのカッコ・・・」




「え?・・・、~~!!!」



あわててベッドの陰にしゃがみ込む。ああああああたし、この格好のままっ・・!

「それはね、新作♪今度、うちでランジェリーも出すことになったの~♪」

いつの間に入ってきたのか、絵梨子がリョウの後ろから声をかける。

「らんじぇりぃ・・・」

「雑誌用にって、香にモデルお願いしたのよね~」
いいいいいからっ!解説しなくて!とりあえず、
「リ、リョウ!出で行って!かえ、帰るからっ!」

するとリョウは、今まで呆けていたのがうそのように

「コイツの部屋って?」
「ああ、隣りよ」
「荷物も?」
「ええ。でも遅刻よ、冴羽さん」

リョウ?
絵梨子?
何、その通じ合ってるみたいな感じは。




「香」


呼ばれた方に顔を上げると、リョウはシーツごとあたしを包み、抱き上げた。あまりにも突然のことで反応ができない。ちょ、ちょっと!絵梨子、手ぇ振ってる場合じゃないって!

隣りの部屋へたどり着くなり下ろされたベッド。目の前には少し身をかがめたリョウ。
なに、なに。この状況。ちょっと、距離感間違ってますけど。



「った!」


弾かれた額をなでる。

「なにすんのよ!」
「なにすんのじゃねぇよ。ったく」
「はぁ!?」
意味わかんない!あんたの力だったらデコピンでも十分殺傷力あるのよ!涙目になりながらリョウを睨む。

「雑誌って何だ?」
痛いところを突かれてぐっと黙る。
「顔出たらまずいよなぁ?」
「顔はっ、ウィッグで見えないようにするって、」
絵梨子が・・・、の部分は自分でも情なくなるくらいか細い声だった。
「そ、それに、試し撮りっていう話だし・・・。な、なによ!もとはと言えば、・・・」
あ。
言わないつもりだったのに。
「もとはと言えば?」
「・・・なんでもない」
思わず漏れてしまった言葉に気まずくて視線をそらした。

「・・・ここで俺のせいにしないところが、おまぁの弱点だよなぁ」
「え?」



「ぅ、わっ」


ぐいとシーツごと体を引き上げられる。自然、リョウと顔が近くなる。
・・・けど、目をそらすのはなんで?






「・・・かったよ」





「え?」









「・・・悪かった!」



「・・・」


「・・・」




「・・・ん」



お互い目を合わせて、フッと笑う。



「さぁ~て、帰りますか。新宿に」

「うん」









***






「んな、な、な、っ、」



長野の一件から数日後。アパートに絵梨子さんから小包が送られてきた。
開けてみると、長野の別荘で撮ったであろう写真が何十枚も。
そしてトドメが一冊の雑誌。
表紙には「キタハラエリ 待望のランジェリー」の文字。

ギ、ギ、ギ、とまるで音が聞こえてきそうなほどに固まった香を横目にページをめくると、そこにはパートナーの姿が。
ボンっと音が聞えたかと思うと、これでもかってくらいに赤く染まる香。

「んな、な、な、っ、なんでっ」

帰りのクーパーでの話だと、試作品だから着たところを見て改良したいという絵梨子さんの言い分だったらしい。試し撮りと言って、撮影者は絵梨子さんのみ。まぁ、そんな話にのってしまったのはタイミングが悪かったからだが、これは・・・。

物憂げにうつむく姿は、顔こそ見えないが香だとすぐ分かる。ストレートのウィッグが肩から頼りなげにさらりと落ちている。薄明かりの部屋は、情事の翌日を思わせ、健康的で整った肉体からは妖艶な雰囲気が漂う。それは他の雑誌で見るような女の下着姿とは似ても似つかない。もっと際どい写真だって、それこそ本物の女の身体だってあきるほど見てきたのに、何だこれは。心臓がやけにうるさい。

雑誌は8ページにもわたって特集が組まれており、ページをめくるごとに違う香がいた。淡いグリーンの華奢なレースの下着を身に付けてベッドに横たわる香。
かわいらしいチェックの下着姿で歯磨きをする香。
オレンジ色のシンプルなデザインの下着と花柄の下着を迷う、黒のタンクトップ姿の香。
薄いブルーのキャミソール姿で窓辺の椅子に体育座りをする香。

こんな。いつもと違う香なんて。

(・・・反則だろ・・)

横で固まっている相棒を盗み見する。こいつが。こんなふうになるなんて。

(やっぱ反則だ)

美しい。率直に、素直にそう思った。
そしてそれをこれから不特定多数の男どもに見られると思うと、気に入らないことこの上ない。

未だ微動だしない相棒の膝に雑誌をぽいと置くと、俺はリダイヤルを押す。
足はそのままベランダへ。左手で戸を閉めるのと相手が出るのは同時だった。


『もしもし~』


上機嫌なところを見ると、俺の行動は読まれていたらしい。

「・・もしもし」
『あら、冴羽さん!見てくれた?』
「・・・ああ」
『何その気のない返事は!私の傑作よ~!』
「あいつの話と違うようだが」
『試し撮りのこと?』
「ああ」
『あら、その話は冴羽さんにも伝えたわよね?』

いや。下着とか雑誌とか聞いてないし。

『香と長野に来ているから、迎えに来るなら場所教えてあげてもいいわよって言ったら、冴羽さん、あなた何て言った?』
「・・・」
『なぁ~んで俺が、って言ったのよ?』
「・・・」
ぐっと言葉に詰まる。そしてそんな俺の様子を楽しそうに向かいで見る金髪堕天使が。いつの間に。くそっ。

『そこで私は、3月15日まで来なかったら知らないからねって言ったわよね?』
「だぁー!だからそれはっ!」

タイミング悪く舞い込んだ依頼を無視しようかとどれほど思ったか。
即行で片づけると猛スピードで長野に向かったが、悲しいかな。着いたのは16日の早朝だった。
「急な依頼が入ったって言っただろぉ!?」
『あら、だから発売前に送ったんじゃない~。1カ月後は世の男どもの目に触れちゃうんだから、香をちゃぁんとガードしてねっていう私なりの配慮のつもりなんだけど?』

どこが配慮だ、どこが!
こんなもの、他の男に見せてたまるか!




「・・・条件は?」
俺は大きなため息をつく。
『さっすが!話が早いわね。来月、うちの新作発表があるんだけど、男女のモデルが1組足りないの。そこで二人にお願いしたいんだけど?』
「・・・・・・わかった」
『ふふ、ありがとう。んじゃ、さっそく写真を差し替えるように手配するわね。香へは、雑誌に載らないから安心してって伝えてくれる?』
「・・ああ」

俺が警戒しなければならない人物リストにキタハラエリが追加された。危険度数は警視庁の女狐の次だ。

中に入ると、ようやく我に戻ったのか香が顔を真っ赤にしたままあたふたしている。
「り、りょう・・・どうしよう・・・」
泣き出しそうになりながら、雑誌のことを心配している。まぁ、こんな下着姿、プロのモデルじゃなきゃ誰だって動揺するに決まってるわな。
「あ~、それ、載らねぇって。モデルをすることを条件に絵梨子さんと交渉したから」
「ほ、ほんと?」
「ああ」
そう言うと、香は「よ、よかったぁ」とソファに倒れるように座った。

「これは、俺から絵梨子さんへ返しておくぞ」
「え!」
「・・何だよ?」
「う、ううん!いいけど・・・、中、見ないよね?」
いや、もうほとんど見たけど。むしろ写真はこれから見るけど。
「あ、あたしの下着姿なんて興味ないもんねっ!」
たはは、何言ってんだろ~と乾いた笑いを浮かべた香の表情は、傷ついたのを隠す顔。俺が幾度となくさせてきた、泣きたいのを必死で隠す顔。

俺は写真と雑誌を肩に担ぐように持つと、一呼吸置く。心臓、ちょっと静まれ。

テーブルに腰を下ろし、ソファに座った香と向かい合う。
確かに。

「確かに、写真にゃ興味ないな。」
瞬間、香の眉毛が八の字になったかと思うと、すぐに、
「わ、分かってるってば」
いつもの調子で、いつもの無理をする顔で言い返してきた。本当に傷ついているとき、おまえはそんな顔をするのな。それでいて、悟られないように無理をする。
他でもない、俺がそうさせてきた。そろそろ、限界だ。心も。身体も。この腕におまえを抱きしめたくてしょうがない、ってことがようやく分かった。

もう一呼吸置く。

「だが、実物には興味あるからな」

「・・え?」

スッと指を指す。
「実物。イコール、おまえ」

「・・・へ?あた、あたし?」

「そ」

「・・・・・・な、なんで?」
ガクっと肩を落とすのはポーズで。やはりこの女には変化球は通じないらしい。

「何とも思ってないヤツに興味湧くと思う?」

そう言うと香はしばらく考えたあと、ゆるゆると首を振った。

「じゃあ、興味が湧くってことは、そいつのことが好きだから、だろ?」

「そ、それは、パートナーだから・・・でしょ・・?」

自信なさげにおずおずと聞き返す香。どこまでも自分に自信がない様子にじれったさを感じる。自分がそうさせたにも関わらず。

「まー、仕事上のパートナーってのはもちろんある。おまぁがいないと仕事になんないし。」

でもさ、と前置きして香との距離を縮める。

「今回のことで、俺、おまぁがいないと仕事どころかフツーの生活すら送れないってことに気づいちゃったんだよね」

香は言われた内容を必死で理解しようと、パチパチと瞬きをくり返す。

「つまり、どうしようもなく好きなんだよな。おまぁのことが」

目を見開いて顔を真っ赤にさせた香が何か言おうと口を開く。それは「信じられない」とか「からかうな」とか言い出す顔なので、瞬時に手をかざし、しゃべるなの合図を送る。

「まぁまぁ。おまぁの言い分はよく分かる。だから、信じてもらえるまで行動で証明することにしたから」

そう言うと、俺はまだ呆けている香をぐっと抱き寄せた。自分の足に香を乗せると、至近距離で見つめ合う。恋愛経験がない香にはけっこう刺激が強いだろう。分かっていても抑えることはしない。香が自分のそばにいるということを確かめたい。安心したい。

しかしこれ以上はと、頭の片隅にある自制心が呼びかける。この先は、香の気持ちが追いついてからでないと意味がない。

だから。

きつく抱きしめる。もう逃がしてたまるかと、俺の胸が軋む。

「りょ・・・」

苦しそうな香の声を合図に力を緩めると香の耳元に顔をうずめる。

そしてかつて言い損じた言葉を、そっと囁いた。











今回の功労者:ミック・絵梨子
結局ガマンクラベの勝者はカオリンというオチ^^

いっつも中途半端ですみません!
スポンサーサイト

- 0 Comments

Add your comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。