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in captivity《完》

captivity(2)

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続きです。







「コウはすごいなー。
あの男に向かって堂々とした態度でおれるんやもん。」
西なまりの女が話しかけてくる。
「うちなんかはアカン。すぐに怖なって下向いてまうし、とても自分の思てること言えへんわ。ホンマ、かっこええ。」
にこっと微笑む姿はまるで年端も行かぬ少女のようだ。

「かっこいいことなんて何もないよ。」
かっこいいことなんてない。
あたしは小さく繰り返す。
そう言ってあたしは席を後にする。ここに来たときから、あたしは周りの人間と距離をとってきた。
変な馴れ合いで情が移らないように。これ以上、自分のせいで誰かが犠牲にならにように。

****************************************

久しぶりに江戸に来た。もう3年も流れていたからそう感じるのも無理はない。人も街も少しずつ変わっている。
馴染みの人間が何人か言葉をかけてくれる。
懐かしい。
素直にそう思った。

ここには以前から知り合いの男がいる。何というか、掴みどころのない非常に扱いにくい男だ。その男が商っている店へ行く。そこは江戸では珍しく良心的だと有名な遊郭だった。遊郭に売られてきた女たちは、一生をそこで過ごすと言われている。つまり、どんなに男と寝所をともにしようが、生涯働いても返せない借金を背負っているのだ。
やがて力尽きた肉体は老いと病で倒れ、ろくな弔いもされることなくひっそりと土に還って行く。ところがその遊郭では、懸命に働けばいずれ堅気の世界に帰してくれるという。商売女の扱いも、他に比べて顕著に異なるらしい。そんな噂がまことしやかに江戸で流れ、商売女にとっても客にとっても唯一信頼できる店として名を馳せていた。

「久しぶりだな・・・」
ここの暖簾をくぐるのも。
もう来ないと思っていたが、まさか仕事で来るとはな。
自嘲気味に微笑むと、中に入った。すぐに係りの者が出てくる。顔見知りの人間なのですぐにつないでくれた。




「久しぶりだな、リョウ。」
一室に通されると、外を眺めていた男がゆっくりと振り向いた。
「あぁ。3年ぶりか、海原。」

「珍しいじゃないか、お前から私を訪ねてくるなんて。」
「ちょっとな。今関わっている仕事の情報が欲しかったもんで。」
「そうか。」
フッと微笑する目の前の男は、どこか楽しそうだ。目尻の皺が3年の時を感じさせた。

「よって行くか?」
店で客を取るかということを聞いているのだろう。さすが、俺という男を知っている。
俺は苦笑して「あぁ。」とだけ答えた。

廊下に出て、女たちが控えている部屋へ行く途中、一人の女とすれ違った。遊女にしては珍しく髪が短く、化粧も薄い。客に笑顔を振りまくでもなく、覇気もない。目はどこか冷めていていた。商売女というには到底程遠い女だったが、わずかに上気だった頬がたった今情事を終えてきたのだろうことを物語っていた。俺たちに気づいた女は身を壁際にずらし、頭を下げる。その女を冷静に観察している中で、「範疇外だな」などと思う俺は、相当な色好みというところか。

その日、俺は海原の店で女を買った。


****************************************

久しぶりに客を取った。
いかにも女に不自由していそうな男だった。それでいて自分に酔っていて、何かと感想を求めてくる。異常に荒い息も、少しトーンの高い声も、すべてが不快で仕方なかった。演技だと知らずに一人で満足し果ててしまった哀れな男。そこまで考えてふと我に返る。

「哀れなのはあたしか・・・。」

客を取った夜は、決まって外を眺める。どんなに寒くても、遅くても、外に出て星を仰ぐ。少しでもこの卑しい身を清めたくて。初めて客を取った頃は泣いてばかりいた。この世のものとは思えない屈辱に耐えられなくて、舌を噛んで何度も死のうとした。その度に思い出されるあの人の顔。何があっても生き延びろと言ったあの人の顔が浮かぶ。

だからあたしは、自分がどんなに辱めを受けようと今まで執念く生きてきた。
毎度毎度違う男に抱かれようと、客を取れと怒鳴られようと、自分からは命は絶たない。
そう心に決めて。

今日も星が出ていた。
あたしはしばらく、その星を仰ぎ眺めていた。











だらだらと続きます。
関西弁は、もちろん適当です。(すみません)
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