それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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エンドレス











会えないことよりも。








エンド









先月、急に舞い込んだ依頼。
万年赤字の冴羽商事にとってそれは破格の依頼で、断る理由なんてどこにもなかった。依頼人がリョウ好みの美女だってことも、依頼内容がボディーガードだってことも、その期間がいつ終わるか分からないってことも、場所が地方だってことも、この仕事にあたしは必要ないってことも。
全部差し引いてもおつりが来るくらい、破格の依頼だった。

いつ終わるか分からないと言ってもせいぜい1週間か2週間くらいでしょ、と高をくくっていたことは認める。依頼人もそんなに長引かないだろうって言っていたし。
でも今日で何日目よ?
軽く1ヶ月は経ってますけど。


(あいつ、絶対喜んでる・・・)


あのリョウを美女のもとへ一人で行かせるなんてあたしが許可するはずない。夜這いはし放題だし、ちゃんと仕事をするのかとか、考えれば不安要素は山ほどでる。




『だぁ~いじょ~ぶだぁ~って!冴子も来るしぃ』




その一言で一瞬にして冷めた。


あぁ、そういうこと。
つまり今回の仕事は、冴子さんの依頼でもあるってことね。
そしてそれはあたしを連れていけないほど危険なものなのね。




ブラウン管をぼんやりと眺めながら、いない男のことを考える。


ちゃんとご飯食べてる?
身体、無理してない?
怪我とか大丈夫?
まだかかりそう?

この1ヶ月、何度となくくり返された問い。未だ答えはないけれど、連絡がないってことは元気にしているんだろう。そう思うことにしている。

テーブルに置いた袋を横目で見る。

ねぇ、今年はブラウニーにしようと思ってるの。あんたも食べられるように甘さ控えめにしてさ。昨日作った試作品は美樹さんや海坊主さんにすごく好評だったのよ。


ひざを抱えて顔をうずめる。



悲しいのは会えないことじゃない。
これまでも行動を別にすることはあったし、これからもきっとある。
1ヶ月くらい、と自信を持って言えないけど、でも我慢できる。
あたしが悲しいのはそんなことじゃない。



ひざを抱えたままソファーに倒れた。

顔をソファーに押しつけて、頬を流れる生温かいものに気づかないふりをする。









あたしが悲しいのは。









あんたがあたしに会えなくても平気ってことを知ってるから。



あたしの顔を見なくても、声を聞かなくても、あんたはいつも通りに過ごせる。
会えなくても、あんたにとってはきっと何でもないこと。寂しさとか悲しさなんてもの、感じることのほうがおかしいって言ってしまえること。



あんたはあたしがいなくても、平気。



あたしは。
あたしはね、平気じゃないんだよ。これっぽっちも平気なんかじゃない。
平気なんかになれない。あんたがいないと、なんて安っぽいことを言うつもりもないけど、今の状況はけっこう図星。


でも、平気になりたい。早く。
あんたがいなくても平気なあたしになりたい。


(まぁ、無理そうだけど)



なんて自嘲気味に笑いを漏らす。



すると。

「!」


急に鳴りだした電話に心臓が跳ねる。
もうすぐ日付が変わる時間の電話に、急に不安が襲う。
もしかして、と慌てて起き上がり、急いで受話器をとる。


「は、はい!冴羽商事ですっ」


『――ッ・・・―ぁ――・・・』

「もしもし!?」

『――れ・・・――ぅ―・・・か―』

「?」
ノイズがひどくてうまく聞き取れない。
いたずら電話かと思ったそのとき、

『・・しもし?・・・おり?』

リョウの声。

「も、もしもし!?リョウっ!?」

『あー、オレオレ。やっとつながった』







リョウの声。
1ヶ月前と変わらない、リョウの声。
聞きたいことがいっぱいあるのに、うまく言葉が出てこない。





『香?』

「え、・・あ、うん・・・、大丈夫、聞こえてるよ」

『・・・』

「・・・」

『・・・』

「・・・?」

なかなかしゃべらないリョウ。何か用があったんじゃないの?

「・・・リョウ?どうかしたの?もしかしてけが」

『あー、いや。こっちは大丈夫だ』

「そっか・・・」

良くない状況を想像したが、あっさり否定されて胸をなで下ろす。

『・・・・・・あー、まぁあれだ』

「うん?」

『大丈夫なんだろ?』

「?」

『いつも通り適当に変わりなく過ごしてんだろ?』

「・・・うん」

『こっちも変わりねぇから』

「うん」

『あと少しで片付くから』

「うん」

『チョコ、全部食うなよ』

「・・・うん」


「じゃあな」と電話はあっけなく切れてしまった。
受話器を片手に、あたしはしばらく止まったまま。


ねぇ、今のって。
あたしを思い出してかけてくれたって思っていいの?
今年もあたしの作ったチョコを食べてくれるって思っていいの?


「・・・は、ほ・・・んと・・に・・・」


ひどい男。
たまに優しくして、思わせぶりなこと言って。
その度にあたしがどんな気持ちになるかも知らずに。

でもそんな男にどうしようもなく惹かれてしまっている自分に呆れてしまう。
これじゃ平気になるどころか

(ますます深みにはまってしまうわね・・・)

無機質な音を聞きながら、あたしは受話器を両手で握った。
ここにいない男を抱きしめるように。












まさかのバレンタインデー作品です。
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