それでも

完全自己満足のCH二次創作ブログです。 想いのままに書き散らかしています。

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period⑨


たくさんの拍手をありがとうございます!お返事はもう少しお待ち下さいね。

完結です。






香の手首を掴む。意外に頼りない細さにホテルでは内心驚いた。あのときよりは力の加減はできているものの、力まかせに触れると折れてしまうんじゃないかと不安になる。俺の手が軽く一周してしまう香の手。しっとりとした肌も透き通る白さも、まったく違う生き物みたいで焦る。
よくこんな女を目の前に自分をごまかせてきたものだ。

「ちょ、ちょっとっ!離してよ!」
突然のことに驚いた香が声を荒げる。

「逃げんなよって言っただろ」
「逃げてないわよっ!拒否してんの!」
「逃げんなよって言ったのは、自分にだ」
「・・・?・・何言って」
「俺はもう逃げない。自分をごまかしておまえを失うなんざごめんだからな」
「な、」
「うそだと思う?」

目を見開いて表情を硬くした香の言葉を先読みした俺は問いかける。
抵抗が止んだ手はしかし硬く拳を作っていた。

「・・・あたりまえでしょ」

つぶやくように吐き出された香の言葉は、予想していたものの、思いの外俺の心臓に深く突き刺さった。
あたりまえか・・・。

「そう思う理由を聞いていいか?」
「あんたがそれを言うの?あたしはあんたのその神経について聞きたいわよ」

俺の言葉が香をますます追い込んでしまうと分かっていても、ここで引くことはできなかった。ここでいつものように手を離せば、もう香は本当に俺のもとからいなくなってしまう。二度と、あのころのように俺に笑ってくれなくなる。
香は小さく息を吐いて諦めたように話し出した。

「あたしは、あんたにとって親友の大事な預かり物で、プライベートなことに口を出すうるさい小姑。あたしは、あんたにとってハンマーを振り回す男女。色気もなにもない唯一もっこりしない女。料理の腕が全然上達しない不器用で足手まといのパートナー。だから」

「だから、俺がおまえを好きなはずがないって?」
「その通りよ」
「おまえの今言ったことの方が全部うそだってことは?」
「ありえないわ」
「・・・即答じゃねぇか」
「あたりまえでしょ?何年そう言われてきたと思ってんの。年季が違うのよ」

香の手をつかもうとすればするほどすり抜けていく。俺が本気になればなるほど香の心が離れていく。俺の言葉がそう簡単に届かないところまで香は行ってしまったのかと思うと、焦燥感にかられる。呼吸が速くなり、ドクドクとこめかみが脈打つ。これが長年自分をごまかし続けてきた代償なのか。香をさんざん傷つけてきたことの。


「は、年季ねぇ・・・」


――俺はこの女がいなくなったらどうするのだろう。

香と暮らすようになって、お互い意識せずに生活できるようになったころにふと思った。香がいると暖かくなる空気とか、香が笑っていると満たされる心とか、そういうものを知らなかったころに果たして戻れるんだろうかと。そのときはいずれ表の世界へとどこかで考えていたから、特に問題はないと言い聞かせていた部分があった。しかし今は。
日に日に想いが強くなることに焦り、見ないふりしてきた結果がこれだ。
年季が入ってるのはお互い様。


「年季なら負けねぇよ」


俺は香を引き寄せ、きつく抱きしめた。
好きな女が目の前にいるだけで我慢がきかなくなる。本当はいつだって離したくないのに。

「なっ、や、やだっ!はなしっ」

力いっぱい抵抗する香を抱きすくめる。やだなんて言うな。俺から離れようとするな。そんな想いを込めて自分の体温を移すように力を込める。
しばらく抵抗していた香はやがて力つきたとでも言うようにその場にへたり込んだ。抱きしめたまま二人で床に座る。



「・・・で・・」


くぐもった声で香が泣いていると分かった。腕を緩めると目に涙をいっぱいに溜めた香と視線が合った。

「な・・・で、こん・・・な・・」

まばたきをすると、ぱたぱたと雫が落ちる。
泣かせたいわけじゃない。悲しませたいわけじゃない。俺のそばでずっと笑っていてほしいだけ。
どうしたら信じてくれる。


「なぁ・・・、俺がおまえを好きだってこと、どうやったら信じる?」
「・・・無理。信じられない」
「それは俺が無理。すでに満身創痍で瀕死状態」
「・・・さんざん人を傷つけてきたあんたが言う?」
「・・・モウシワケアリマセン」

カタコトの俺の言葉にふっと香の空気が緩む。頬を濡らす涙を親指でゆっくりぬぐうと、反射的に香の肩が跳ねる。さっきみたいに抵抗されなかったことが俺を安心させる。

「俺は裏の人間だから、お前はいずれ表の世界へ返すつもりだった。堅気の男と一緒になって結婚して子どもを産んで。それがおまえの幸せだと思ってた。だから、日に日につのるおまえへの気持ちは気のせいなんだと思うようにした。こいつは親友の預かり物、女じゃないって」

香の表情が曇るがかまわず俺は続ける。

「けっこう大変だったんだぜ?惚れた女がだんだん女らしくなっていくのを目の前に手が出せないとか、何の拷問だよって。しかもおまえ、風呂上がりとか夏とか無防備に薄着するだろ?あれは目のやり場に困った・・・。だから俺はわざとおまえを傷つけるようなことを言ってごまかした。超がつくほどの鈍感女だから、まわりの野郎どもにどんな目で見られてるかまったくわかってねぇし」

香の両手を包みながらその手に視線を落とす。

「おまえをこの世界に引き込んじまったことへの後悔はきっとこの先も消えない。本当にこれで良かったのかっていう迷いも。でも、俺はその想いを背負ってでもおまえといたい。さんざん傷つけて振り回してきたから信じろって方が無理かもしれないけど、でも俺は」


視線を上げる。


















「それでも俺は、おまえといたい。そばにいてほしい、ずっと」


























アニキが死んで、リョウのパートナーになって、一緒に生活するようになって、
そのうちリョウに恋をして。
美女を見る度にナンパをくり返すリョウを、依頼人に想いを告げられるリョウを、
あたしを男女と呼ぶリョウを、心から好きになった。
たとえ女扱いされなくても、あたしを一生好きにならなくても、

それでもいいと思った。
そう思える恋だった。




そう思えるのは、きっと、後にも先にもリョウただ一人だけ。














「・・・・・・て・・・・・の?」



「?」



「・・・・・・信じて・・い・・の?」
 








まいった。





「・・・よっぽど信用ないのな、俺」

苦笑いが漏れる。

信じられないんじゃない。信じるのが怖いんだ。
俺を信じて期待して、その度に裏切られてきた香にとって当然の心理だろう。



「俺は女好きでスケベでどうしようもない男だからおまえを泣かすことがあるかもしれない。でも、これまでのような傷つけ方はしない。努力する。・・・惚れた女に信じてもらえないとさすがにこたえるからな」

なによそれと香は頬を膨らませたが、その顔は怒っていない。
すり抜けた香の手が俺を辿って戻ってくる。その感覚にどうしようもないほどの幸福を感じていて。

右手を香の頬へ滑らせる。そっと涙のあとに触れると、香の瞳がまた潤みはじめた。
ああ、こんなかわいい女を目の前にしてよくぞ今まで手を出さなかったものだと今さらながらに自分の頑強な理性に感心する。









「好きだ」









その言葉が引き金だったように、香がそっと目を閉じる。
ゆっくりと距離を縮め、お互いの温度を確認しあう。
見た目よりも弾力のある唇に少しずつ侵入を深くする。後頭部に手を回して逃げられないようにすると、息継ぎの間も与えずに続ける。時折、苦しそうに漏れる息にますます我慢ができなくなる。

「・・・んっ・・・はぁ・・」

こうやって気持ちが通じてからのキスは初めてだ。
最初も二回目も、すれ違ってしまった。
そんなことを考えながら香の舌を絡めとる。キスだけでこんなに気持ちいいなんて。しかも腰に甘い痺れが走るってどうよ。

ゆっくりと唇を離しのぞき込むと、荒い息をつきながら顔を真っ赤にさせた香と目が合った。
きっと、自分でも知らないこいつの顔をこれからたくさん見られるだろう。それは間違いなく俺の大好物になるはずだ。

(まずはその首に残るキスマークの理由と上書きすることから始めましょうかね)


そんな俺の思惑を知ってか愛しい女は赤面してうつむいた。









曖昧な関係にピリオド。

きっと番外編も書いてしまうだろう・・・。
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- 2 Comments

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2012/11/12 (Mon) 20:46 | EDIT | REPLY |   
tokososuke">

tokososuke  

こちらのコメントには別途お礼いたしました。

2013/01/27 (Sun) 21:37 | EDIT | tokososukeさん">REPLY |   

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